チョコレートから始まるカード収集:Stollwerckとトレーディングカードの原型(ドイツ編)
今回も、さらに、はるか昔へ、話題を飛ばしてみましょう。
前回まで、Panini Calciatoriの初期シリーズについて見てきました。1961-62年版から1963-64年版にかけて、Paniniはサッカー・フィギュリーネを、アルバムに貼って完成させる収集文化をつくってきました。
「商品に付属する小さな絵カードを集める」という文化そのものは、Panini以前からヨーロッパに存在していました。その一例として、今回は所蔵するドイツの「Stollwerck(ストルヴェック)のカード」を紹介します。
Stollwerckは、ドイツのチョコレート会社です。19世紀末には、おまけカード(広告カード)をつけたチョコレートを販売しており、これらは現在のトレーディングカードやステッカー文化の前史として見ることができると思います。

政治家・軍人・文化人のような肖像と、寓意的な図像が組み合わされた美しいカードです。
このカード(1900年前後)を見ると、単なる広告というより、絵として楽しめる作りになっていることが分かります。人物の肖像だけでなく、背景には歴史、産業、教育、正義、軍事、海運などを思わせる図像が描かれています。現在のカードのように選手写真を並べるものとは違いますが、「小さな紙片に絵と情報を詰め込み、シリーズとして集める」という点では、収集カードの原型にかなり近いものを感じます。

Stollwerckの商品広告、シリーズ番号、アルバム収集に関する表記が確認できます。
裏面を注目して見てみると、裏面にはStollwerckの商品名や広告が印刷されています。Adler-Cacao、Chocolate-Desserts、Kinder-Biscuits、Waffelnなど、チョコレートや菓子類の宣伝が並んでいます。
また、「Gruppe」「Serie」「No.」といった表記も見られます。つまり、これらのカードは単体で配られた広告ではなく、シリーズとして集めることを前提にしていたと考えられます。さらに「für Stollwerck’s Sammelalbum」という表記から、アルバムに収めることも想定されていたことが分かります。
この点は、後のPanini Calciatoriととても似ています。もちろんStollwerckはサッカー選手のカードではありません。Paniniのようなステッカー型アルバムもありません。しかし、「商品を購入し、シリーズ番号のあるカードがあると、アルバムに集めたくなる」という流れは、Panini以前からすでに存在していたと考えれます。

軍艦や帆船などを題材にした横長カードです。
もう一つのシリーズでは、軍艦や船舶が描かれています。Kreuzer、Panzerschiff、Schlachtschiffなどの表記があり、当時のドイツにおける軍事・技術・海運への関心が反映されているように見えます。
このような題材は、単なる商品広告にとどまりません。カードを通じて、歴史、科学、軍事、地理、人物、産業などを学ぶ要素もありました。
こうしたカードには子どもや家族が楽しみながら、学ぶことのできる「教育的な絵カード」としての役割もあったのだと思います。

表面の船に関する説明と、Stollwerckの商品広告が組み合わされています。
船舶シリーズの裏面を見ると、表面に描かれた船についての説明文があり、同時にStollwerckの商品広告も掲載されています。つまり、カードは「広告」でありながら、「知識カード」でもありました。
Stollwerckのカードは広告カードであり、現代のスポーツカードとは目的が異なります。それでも、表面に魅力的な図像を置き、裏面に情報を載せるという作りには、現在のカードにも通じるものがあります。現在のサッカーカードでも、表面には選手写真、裏面には所属クラブ、ポジション、成績、プロフィールが記載されています。Stollwerckのカードも、表面の絵柄と裏面の情報が組み合わされており、カードを読む楽しみが作られています。
Panini Calciatoriと直接同じものではありませんが、Stollwerckのカードには、後の収集カード文化につながる要素がいくつも見られます。商品に付属すること、シリーズで集めること、裏面に情報があること、アルバムに整理すること、そして美しい図柄によって保存したくなることです。
Stollwerckより、少し古い、Liebig(ドイツ人化学者ユストゥス・フォン・リービッヒの名を冠した肉エキス食品会社)のカードも、ヨーロッパの広告カード文化を代表する重要な存在です。Liebigは美しいクロモリトグラフのカードを長期にわたって発行し、歴史、自然、科学、芸術など幅広いテーマを扱いました。印刷文化や広告カード史を語るなら、Liebigも欠かせません。
ただ、Paniniへつながる「食品・菓子商品と収集カード」という流れを説明するには、Stollwerckのチョコレートカードはとても分かりやすい例だと思います。チョコレートを買う、カードが付いてくる、シリーズで集める、アルバムに整理する。この構造は、後のサッカー・フィギュリーネやステッカー収集にも通じています。
そういえば、カルビーの当たりカードで、専用アルバムがもらえて、楽しく集めました。
さて、Paniniが1960年代に作ったのは、サッカーを題材にしたアルバム型収集の完成度の高い仕組みでしたが、StollwerckやLiebigのような企業広告カード、食品のおまけカードにもアルバム収集の文化がありました。
そう考えると、現代のサッカートレーディングカードも、突然生まれたものではありません。19世紀末のチョコレートカードから、20世紀のフィギュリーネ、そしてPaniniやToppsのカードへ。小さな紙片を集める楽しみは、かなり長い歴史の上に成り立っているのだと思います。
実は、もっと昔から教会やデパートで配布されていたカードがあるという話しもあるようですが。それはまたの機会にでも。あ、英国のタバコカードも色々ありますね。。。
