二次創作|ひよこ信者 ―関谷ユウコ先生作「神様。以下略」より、坂本の景色―
チキンラーメンのひよこちゃんが、祭壇の上で無表情に微笑んでいる。
俺はひよこちゃんを信じている。
単なるそういう宗教を信じているだけで、所謂檀家みたいなモノだ。つまりウチは代々、浄土真宗とかでなくて、たまたまひよこちゃん宗だったってことだ。
ひよこ宗だって立派な宗教だから、それぞれの信心にもレイヤーがあって、熱心にやってる人もいれば、俺みたいに信じてはいるが、まあ、生活の支障のない範囲でやってます、みたいな人もいる。その態度は別に否定はされたりもしない。仏教だってそんな感じだし、宗教ってそもそも自分が心地良く生きるためのもので、それが一番良いに決まってる。
高校のとき、ウチの宗教の事で周りからドン引きされた。
お前らだって変な仏像とか神棚とか時期によってはキリスト教まで信じてるのに、ひよこは信じられないとか意味わからんと思った。
まあ、周りに合わせて、隠れキリシタンみたいにする事も出来るけど、それならお前らも隠れ仏教にしろや、みたいな気持ちになって、結局隠さなかった。
大学に入ってからは、それなりに女と付き合ったり別れたりを繰り返した。ひよこを見たら必ず引かれた。それが原因だと思うんだけど、そのあと疎遠になる事が多かった。何を信じるかなんて、人それぞれだ。それぞれの女は、それぞれの妄想の世界の俺を作って、勝手に信じていた。
その女の妄想世界と解答が合わなかったらダメみたい。ひよこは特にダメだったみたい。
俺もひよこ信者の前に、ひとりのオスだから、女の妄想に上手く寄り添ってみたりして、そこそこよろしくやっていた。
ある日飲み会に行ったら、テンプレみたいな女が、「ひゃくまんぼると」とか言って、陽気な感じを演出していた。その横で、苦笑いしてる友だちの女が妙に気になった。その日はその女と適当に喋って、楽しかった記憶だけ残った。
別の日に、そいつを昼飯に誘ったら、ひょいひょい誘いに乗ってきた。
その女は、俺のひよこちゃんを見ても全然引かなかった。別に今更、引こうと引くまいとどっちだって良いんだけど。と、思っていたのだが、そのリアクションはボディブローの様にじわじわと効いてきたのだった。
歓迎されないまでも、受け入れられる範囲に居るって良いもんだな、と思った。
でも俺は、そのときすでに彼女が居て、しかも結婚するとかしないとかのフェーズまで来ていた。だから状況を整理すると、ひよこを受け入れないまでも、ギリギリオッケーの人が先に居て、その後でその記録を塗り替えて来た女が現れた、という事だ。
なんかで見たんだけど、最高の結婚相手を見つける方法って、十人付き合うとしたら、三人目以降で一番良いと思った人が良いって数学的にも証明されているって、聞いたことがある。
「ギリギリオッケー」と「別に気にしない」。そうなると、「別に気にしない」、が良いに決まってる。九人目だけど。
日に日に「別に気にしない女」と会う頻度が高くなった。俺に宗教があるのと同じように、女たちにも妄想という名の宗教がある。だから俺も出来るだけ妄想を受け入れていきたいと思ってるんだけど、面倒くさい事に妄想って事前に教えてくれないもので、分かったときには、既にアウトかセーフかの判定が終わっているのだ。そういうシステムなのだ。
「別に気にしない女」は、彼女が居ても気にしないのかと思ってたけど、結局アウトだったみたい。それならテンプレ女が良いに決まってる。既存のデータが豊富だし。
宗教観の違いは気にしないと思ってたんだけどな。
婚約してる女の妄想も、色々崩れちゃったみたい。ほんとに申し訳ないと思ってる。人生ムズイな。
こんなとき俺は、ひよこに縋りたくなる。
俺は、祭壇からチキンラーメンの袋を取って、中身を開けて、バリバリ食った。
(終わり)
関谷ユウコさんの『神様。以下略』の中の、登場人物の坂本君目線から、勝手な二次創作をしてしまいました。
本当に恋愛系は分からないので、坂本君を勝手気儘な思想で塗り固めてしまいました。
関谷さんの世界観をぶち壊したのではないかと思い、内心ドキドキしています。
↓元ネタです。
↓関谷さんがこの記事で「坂本君目線」に言及されています。
↓くいたろうさんの坂本君目線です!
関谷さんすいません。
これは多分、くいたろうさんのせいです。
