56歳|余白の中の余白
最近、少し変わったことがある。
予定を詰めることが減った。
昔は、手帳の空いているスペースを見ると、
何かを入れたくて仕方がなかった。
会う約束、やるべきこと、行く場所、
学び、未来の準備。
空白は、埋めるためにあるものだと思っていた。
でも最近は、少し違う。
24時間という時間の中に、
まず「自分の世界」が先にある。
そこに、ちょこっと仕事。
ちょこっと人。
ちょこっと予定。
すべてを詰め込むのではなく、そっと置いてみるような感覚だ。
誰かとの時間は好きだし、働くことも嫌いじゃない。
だけど、それらを人生の中心に置かなくなった。
先に決めているものがある。
大切な人といる時間。自分が静かでいられる時間。
そのあとに残った、ささやかな場所に、
他の世界がそっと入ってくる。
不思議なもので、余白ができると、
またその余白を埋めたくなる時期だってある。
だけど今の私は、余白の中にもうひとつ、余白を作ってみたい。
予定のあとに、次の予定を入れない。
帰り道を、急がない。
何もしない午後を、ただ楽しむ。
次の季節のことを、ぼんやりと考える。
言葉にならない感覚を、そのまま置いておく。
そんな時間が、少しずつ私を整えてくれている気がする。
若い頃は、たくさん持つことこそが豊かさだと思っていた。
でも今は、持たずに残しておくことも、
ひとつの豊かさなのかもしれない。
余白の中に、余白を。
まだ練習中だけれど、56歳の今の私には、
この実体のない贅沢が、少し似合っている気がしている。
cocoito

