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会議は必要か?不用か? 『インベスターZ』の疑問は『ハンチョウ』で解ける

きっかけは筆者が何気にネットを閲覧していた時、三田紀房の漫画『インベスターZ』のある言葉を見かけたことだった。

それは、「優秀な人間が相談して出した結論なんてロクなもんじゃないんだよ」である。

主人公と筆者を含めて、なんでそんなことを言うのか?と思った人も多いはずである。

ところが、この言葉は、あらゆる企業や官公庁で行われている「会議」というもの問題点を言い当てているようである。

そして、その問題点の解決方は『1日外出録ハンチョウ』という漫画で、提示されていることがわかった。


『インベスターZ』とは?

『インベスターZ』とは、『モーニング』で連載されていた漫画作品で、投資をテーマにしたビジネス漫画である。

主人公は、ビジネスマンではなく、札幌市にある道塾学園の学生である財前で、彼が学園にある「投資部」という部活動に入部したことで、投資やビジネスの世界を学ぶことになる。

主人公である財前を通して、経済についてわかりやすく解説している点が特徴であり、そして、三田紀房特有の癖の強いキャラクターが繰り出すキツイ言動なども見所である。

また、堀江貴文をはじめとする、実在する企業家も、本作に多く登場するのも本作の特徴である。

優秀な人は会議を嫌う

さて、前述したセリフ「優秀な人間が相談して出した結論なんてロクなもんじゃないんだよ」というのは、投資部の主将が、財前に言った言葉である。

言われた財前は、優秀な人間が集まれば、色んなアイディアが集まるはずなのにと納得できなかった。

そんな、財前であるが、ある日、己の父親が叔父と共に、株の投資を始めようとしているのを目の当たりにする。

ところが、父と叔父は、財前の目から見ても、ダメなやり方で、投資をしようとしていたのだ。しかも、そのことに二人とも気づいていない。

そこで、財前は、「父さんたちの話を聞いて、自分も株を始めてみたくなった」と、投資をやって一攫千金を狙うバカ息子のふりをして、2人の目を覚まさせることに成功する。

その時に財前は気づいたのだ。実は、財前の父親も叔父も、しっかり者で、たいへん優秀な人物であるのだが、それゆえにお互いに意見の欠点に気づけず、悪い方向に投資しようとしていたのだと。

ようするに、話し合いをしていると言うよりは、なあなあで決定して、投資をしようとしていたのだ。

投資は常に自己責任

優秀な人ほど、会議で自分の意見を言わない。譲り合いの精神で、ちゃんとした意見を言わなくなり、結果的に中途半端な案が、決定されてしまうことになる。

また、優秀な人ほど、リスクを避け、責任を回避したがる傾向があるので、結果的に、なあなあで物事が推し進められてしまうことになる。

だから、投資を行う際は、己の判断でしなければならない。投資は、自己責任の世界なのだ。

「優秀な人」は二種類いる

ところが、この論法には、大きな落とし穴がある。優秀な人がしっかりとした意見力を持って、リーダーシップを発揮するというのは、ワンマンなリーダーを生み出す要因となっているのだ。

そもそも、「優秀な人」と言うのは、組織社会で優秀な人と、個人として優秀な人の二種類いるが、リーダーシップを発揮するのは、個として優秀な人なのだろう。

個として優秀な人は、常に自分の意見を持っており、他者に流されないものだということだ。

『インベスターZ』では、相談して物事を決めるのは、日本人の美徳に見えるが、実際は責任逃れをしているだけであり、海外ではマネージャークラスの人間が、少数で決断を下すと言っている。

つまり、個として優秀な人は、海外の方が多いと言いたいのだろう。

ところが、欧米は強力なリーダーを輩出すると、下につく人は、ただのイエスマンに成り下がってしまうことになる。

実際、欧米の企業は、イエスマンが多いことで有名だ。

独裁体制をとるか?それとも共同体制をとるか?

現在のトランプ政権なんかも、欧米のこうした「強力なリーダー」を求める組織形態から生み出されたのではないのだろうか?

個として優秀というのは、時として、我儘で傲慢な人間であることの裏返しでもある。

つまり、ワンマンな独裁者を生み出してしまうことにつながってしまうのだ。

一方で、合議を通じた共同体制では、前述したように、なあなあで物事がきまってしまうことがある。

日本の官僚なんかもそんな感じなのだろう。おかしな政策ばかり出ているのは、なあなあでことをおし進めているからではないか?

『一日外出録ハンチョウ』とは?

ここで、もう一つの漫画『一日外出録ハンチョウ』という漫画を紹介しよう。

本作は、賭博漫画である『カイジ』のスピンオフで、債務者たちが地下の労働場でE班の班長として働いている大槻が、博打と物品販売でお金を稼ぎ、そのお金で、外の世界を満喫するという物語だ。

本作では、大槻が仲間達と共に、外の世界で食事を楽しんだり、レジャー施設に行ったり、知り合いの家に遊びに行くなど、グルメ漫画やホビー漫画、日常漫画の要素を合わせ持っており、物語の引き出しの多さが、最大の魅力となっている。

一方で、大槻は、地下で売りさばく物品を企画するために、仲間たちと会議しているという回もあり、こうした回は、どことなくビジネス漫画を彷彿させる。

そして、会議回でわかることは、大槻が会議の執り行うのが、とてもうまいと言うことである。

コーヒーのアテ回でわかること

一番わかりやすいエピソードが、152話「散時」である。

このエピソードでは、大槻のライバルで、C班の班長である小田切が、地下の労働者達に、コーヒーを振る舞う商売を行ったことにある。

対抗意識を燃やした大槻も、コーヒーを販売することを思いつくが、大槻が力を入れたのは、コーヒーではなく、コーヒーと共に軽くつまめるアテの方である。

ちなみに、大槻は、そんなにコーヒーに詳しいわけではなく、インスタントでも全然OKだからとのことで、使ったコーヒーは、業務用スーパーで売っている安物である(ただし、大槻はこだわりが無いだけで、「心からコーヒーは好きなんだ」と言っている)。

やがて、大槻は仲間の沼川と石和と相談し、アテを決めて、地下で販売を行うこととなった。アテを決めたことが功を奏したのか、売り上げは中々のものとなった。

さて、コーヒーのアテを決める会議の際、興味深いのは、石和が絶妙にダメな意見ばかりを出してくるというところである(キャラメル入りボールチョコ、コーヒーゼリー)。

その際、大槻は、やんわりとした口調で、ダメ出しをしていくのだが、よく見ると、ダメな意見を訂正することで、アイディアの絞り込みができているように見える。

ようするに、大槻はダメな意見と向き合うことで、意見の選り分けをしているようにも見えるのだ。

つまり、ダメな意見をうまく分析して正すことで、良い案を持っていくというのが、会議や相談の重要な点ではないかと思う。

会議にはダメな意見も必要

『インベスターZ』の財前も、己の父親と叔父が、ダメなことに投資をしようとした際、バカ息子になって、2人の愚行を止めたことでもわかるように、ダメな意見がときに功を奏すこともある。

つまり、ダメな意見も、それはそれで必要なのだ。そうした意見をうまく活用するには、相手の言い分をしっかりと聞いて、何がダメなのかを分析して説明することが大事なのだ。

要するに、会議の席では、どんな意見でもいいから、ちゃんと発言することこそ大事なのである。

ただし、『インベスターZ』のキャラクターは、頭はいいのかもしれないが、みんなプライドが高く、ダメな意見を出す気は絶対にないし、むしろ、自分の意見にダメ出しをされるのを絶対に嫌うタイプが多い。

財前だって、相手が自分の父親でなければ、バカっぽいふるまいなんか、絶対やらないタイプだろう。

『ハンチョウ』の会議はなぜ面白いのか?

『ハンチョウ』は、会議のエピソードが読者に受ける傾向がある。実際、ブルボンドラフト会議(42話「指名」より)のエピソードのように、彼らがやっている会議はとても楽しそうだ。

これは、大槻が石和のようなダメな意見も、ちゃんと聞いてくれるからではないのだろうか?

もっとも、石和は、ダメな意見ばかりを言うわけではなく、ちゃんとした意見を述べることもある。

そして、聞いたうえで、何がダメなのかを分析してくれるから、石和も沼川も意見を堂々と言うことができるのだ。

一方、『インベスターZ』の登場人物たちは、ダメな意見には絶対耳をかさないだろう。

損切りを重んじている投資部の彼らが、無駄な意見に耳を貸そうとするはずがない。

「カリスマ型リーダー」を探す前にやるべきこと

優秀な人は、自分自身が中心になりたがるタイプが多い。その一方で、前述したように責任やリスクを回避したがる傾向が多い。そのために、立場や力関係を気にして、無難な会議ばかりになるのだ。

そして、それは欧米でも同じではないのか?彼らの社会で、強権を持ったリーダーが誕生するのは、責任を嫌う人間が多いからではないのか?

財前は、このエピソードで、日本にカリスマ性を持った強いリーダー、すなわちカリスマ社長は出てこないものなのか?と思いをはせている。

しかし、リーダーシップを発揮するものは、決断力に富んでいるのではなく、単純に強気で傲慢なだけで、迷惑な存在である可能性もある。

責任を負わず、なあなあですます日本の組織と、強権を持ったリーダーに動かされている欧米の組織は、相手の意見を尊重せず、立場や力関係で考えてしまうと言う意味では同じではないか?

カリスマ性を持ったリーダーを探す前に、まず大槻のように、他者の意見を尊重し、耳にを傾けることからはじめてみないか?

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