「ダメ」と言わないって難しい。ピーラーを手にした2歳娘に、私は叫んだ。
「ダメ!」は言いたくない。でも、危険な道具に手を伸ばした2歳娘に、私は叫びました。
伝わったその後に、私が見た表情とは。
お風呂上がり、娘たちのあれこれを終えて。
自分の髪を乾かし、リビングに戻ったときのこと。
ふと目を離したすきに、予想外の展開が待っていました。
そこにはピーラーを手にして、にこにこしているすーちゃん(仮名:すみれ)の姿が。
私はあわてて駆け寄り、思わず叫びます。
「ダメ!やめなさい!!」
我が家のキッチンの入り口には、ベビーゲートを設置しています。
ですが、すーちゃんのイヤイヤ期が始まった頃には突破されてしまいました。
ゲートの外で泣きわめく声に私が耐えきれず、「危ないことをしないなら」という約束で、キッチンへの出入りを許すようになったのです。
でも、この“危ないこと”の定義を伝えるのがとても難しい。
私は、「ダメ」とは極力言わない育児をしようと心に決めていました。
自分や誰かを傷つけることでなければ、できるだけ見守りたい。
どうしてもやめてほしいときは、子どもの気持ちをすくい上げて、代わりの提案をしようと。
…そんな理想はむなしく、今や「ダメ」を言わない日はないかもしれません。
甘かった。子どもは全速力で危険に向かっていくのだと、日々痛感しています。
そして、冒頭の「ピーラー未遂事件」が起こりました。
「ダメ!!」と取り上げられたすーちゃんは、びっくりしてわぁんと泣き出しました。
無理もありません。
他の調理器具は“遊び道具”になっているのに、どうしてこれだけがダメなのか。
きっとすーちゃんは「似ている道具なのに、なんで?」という気持ちだったと思います。
私自身も迷っていました。
大人から見れば明らかに“危険”でも、それを言葉でどう伝えればよいのか…。
同じ引き出しにあるのに、どちらかだけ「ダメ」なんて、分かりにくいよなあ。
でも引き出しごとロックをかければ、家事動線が悪くなる…。
でも、やっぱりまずは伝えてみよう。
そう思い、すーちゃんが泣き止むのを待ち、話しかけました。
「すーちゃん。
ママね、スプーンは今のすーちゃんなら怪我をしないように遊べると思ったの。
でもピーラーは、パパやママでも手を切ってしまうことがあるの。だから遊びには使えないんだよ。」
するとすーちゃんは、うん、と頷いてくれました。
翌日。
またすーちゃんがキッチンにとことこ入ってきました。
どうするかな、と私はそばで見守っていました。
すーちゃんは、いつも通り引き出しを開けて軽量スプーンや味噌マドラーを手に取ります。
そしてピーラーを見つけると、小さな声で「あぶない」とつぶやいて、そっとよけました。
「そうだね、すーちゃん!」
ついまた私は大きな声を出してしまって、すーちゃんはびっくりしてこちらを見ました。
でもそのあと引き出しに目線を戻したとき、一瞬だけ得意げな顔をしたのを、私は見逃しませんでした。
今はまだ危ないピーラーも、きっといつか料理のお手伝いで使う日が来る。
「ずっとダメ」じゃないからこそ、説明が難しい。
でもまたそのとき話せば、きっと分かってくれる。
そう信じられることが、うれしかったです。
思い描いていた育児のかたちは、ガラガラと崩れていく。
それでも、今の私たちらしくまた少しずつ育っていけば良い。
ちょっとだけ、そんな自信がつきました。
おわりに
もう1年もすれば、今みたいに細かい「ダメ」は減っていくのかもしれません。
その日が来るまで、できることが増えていくすーちゃんとともに、あれこれ迷いながら進んでいきたいです。
※調理器具については、今も基本的に見守りのもとで触れさせています。
