Opus.4:熊の木彫り
「動物のお医者さん」と言う漫画をこよなく愛していた。その中で、北海道の熊の木彫りが登場するシーンがあり、使い所もないのに欲しいと思っていた。
どこかに落ちていたら拾う気概でいた。
ある日、遅くまで幼馴染らと遊び回った夕暮れの帰り道。電柱の陰に何か大きい塊のような物体を見かけた。逆光でよく視認できない。
「あれ何だろう…ゴミ袋?」
訝しがる幼馴染。
私はピンと来た。
「あれはきっと、北海道の熊の木彫りだよ!」
やんややんや言いながら皆で近づいてみると、それはゴミ袋ではなく、しゃがみ込んだ人の姿だった。
「ギャーー!人だー!!」
私達は大声を上げ、一目散にその場を走り去った。
後に幼馴染の妹が、その人は吐いている様子だったと語った。気分不良で帰宅まで耐えられず、屈み込んでしまったのかもしれない。
不幸にもそこにクソガキ共が通り掛かって、あろうことか「熊の木彫り」呼ばわりされた、その方の心境は如何ばかりだったろう。
それから私は安易に熊の木彫りだなんて口にするのをやめた。ごめんなさい。
