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【拝啓文芸部】最後の決闘

歴戦の強者ウエストウッドは、血と硝煙の匂いにまみれた暮らしから引退を決意していた。

田舎に牧場と家を買い、愛する女性マリアと過ごす穏やかな日々。

それらを一時、棚上げしたのは――昔の恩義のために引き受けた「最後の仕事」のためだ。

相手は、カルロスというガンマンだった。

「カルロス? 聞いたこともない名前だな」

この戦いは必ず勝たねばならない。

ウエストウッドは、あらゆる伝手を使って情報を集めようとした。

奴の身長、歩幅、過去の決闘で見せた立ち回り等々。

決戦前日、ようやく情報屋がもたらしたのは、たった一つの情報だった。

「カルロスは左利きだ。それしか分からん」

「……そうか」

ウエストウッドは頷いた。

「だが普通にやれば、この界隈であんたに勝てる者はいないだろう」

情報屋の言葉に、ウエストウッドは微かに笑って応えた。

――そして翌日。

正午。陽炎の揺れる街のメインストリート。

現れたカルロスを見た瞬間、ウエストウッドは戸惑った。

奴は『両腰』にガンホルダーを下げていたのだ。

二丁拳銃?

右から抜くつもりか、それとも左だけが本物で、右はただの見せかけか。

考えろ。落ち着け。

考えている間に、時間は流れ続けた。

ついにカルロスの右手が動く。

いや――違う。左手だ。

判断が、コンマ一秒遅れた。

乾いた銃声が響き渡り、ウエストウッドの胸を熱い衝撃が貫いた。

膝から崩れ落ち、視界が急速に色を失っていく。

情報は、正しかった。

薄れゆく意識のなか、ウエストウッドの脳裏に情報屋の言葉が浮かんだ。

――普通にやれば、この界隈であんたに勝てる者はいないだろう

そう、普通にやれば良かったのだ。

(昨日の私へ言いたかったな……決して迷うなと)

とどめの銃声が鳴り、彼の意識は完全に断ち切られた。