#8 霧雨の朝│朝活21日間プロジェクト8日目
外に出ると、顔にプツプツプツと触れる自然のミスト。
傘、いるかな…
そう思いつつも、引き返さず公園へと進む。
今日は、水分を帯びて顔あたりまで垂れ下がったササの葉を、濡れないように手で避けながら進む。
蜘蛛の巣も雨を吸ってか、いつもより重たく顔に絡みついてくる。
突如、暴れる私。
今日はそうやって何度もパニックになり、そんな自分に思わず、
「なにやってんのっ」
と、一人でツッコミを入れる。
その瞬間、内側にかすかな変化を感じた。
「私、楽しんでる。」
振り返ってみると、初めの頃の私は、ビクビクと怖がっていた。
2年前に引っ越してきたこの街は、近所付き合いが濃く、人との垣根が低い。
朝一番の公園で、だだっ広い草はらに一人じっと座って動かない人がいたら、きっと怪しく見える。そして、たちまち噂は広がっていくかもしれない。
そんな不安を抱えていた。
「誰にも会いませんように……」
そう強く願いながら公園へ向かった初日。
通り過ぎる車に顔を見られないよううつむき、キョロキョロと辺りを見回しては、人影がないか探す。
今思えば、完全に怪しい人だったと思う。いや、きっと今もだろう。
それでも、どうしてもここでしたかった。
選んだ場所は、草はらのどまんなか。
意を決してそこに座り、静かにあぐらを組む。
しばらくして、遠くで「誰かの足音」が聞こえた。
その瞬間、身体が強張る。
見られてるかも。怪しまれたらどうしよう。
呼吸に意識を向け、冷静さを保つ。
そうやって、初日は過ぎた。
3日目の朝。
前を歩く、犬を連れたおじさんの姿を見た瞬間、体が止まった。
「なんでいるの……最悪。」
そんな苛立ちさえ湧いてきた自分に、ただ事ではないものを感じた。
森も、私の内面を映しているかのようにその日は荒れていた。
私は、その感情にちゃんと向き合うことにした。
自分の心に問いかける。
何が怖いの?なぜ、隠れようとするの?
すると浮かんできたのは、
「変わった人と思われること」「危険な人だと見られること」「そして、排除されること」
いつ植え付けられたのかも分からない、不安の芽だった。
私は、その怖がっている自分に、抱きしめるように寄り添った。気が済むまで、とことん。
そして、もう一度問いかける。
「それ、本当?」
違う。
今の私は、自分で居場所を選べる。どこでだって生活できる。ただ場所を変えたらいいだけ。
そう思えた瞬間、肩から、すうっと力が抜けていった。
朝のおじさんは、私の中に残っていた古い信念を、手放すために現れてくれた存在だった。
それ以来、誰かの気配を感じても、私はありのままで、そこに身を置き、自然と調和できるようになった。
外側に向けて頑なに閉じていた心の強張りは、じわじわと、しっとりと、ほどけていった。
優しく頬に触れる自然のミストに癒されながら、すでに懐かしい記憶をたどっていた。
今日の霧雨は、そんな私の変化をそっと祝福してくれているようだった。
