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「ごめんは届いたのに、傷ついた場所が分からなかった」

笑っていたのは、

たぶん私の方でした。

何気なく言われた一言に、

少しだけ手が止まりました。

相手はすぐに気づいたようで、

「さっきはごめん。言い方よくなかったね」

と謝ってくれました。

こちらも、

「大丈夫、大丈夫」

と返しました。

そのあとも、

会話は普通に続きました。

ちゃんと謝ってくれた。

自分も大丈夫だと答えた。

それなのに、

一人になってから思い返すと、

さっきの一言だけが、

まだ少し残っていました。


空気説明


謝ってもらったのだから、

もう終わった話のように見えます。

相手は謝った。

こちらも受け取った。

言い争いにもならなかった。

その場の空気も、

すぐに元へ戻りました。

だから、

まだ気にしている自分の方が、

少し面倒なように感じます。

もう謝ってくれたのに。

悪気もなかったと言っていたのに。

これ以上、

何を求めているのだろう。

そう考えるほど、

残っている気持ちを、

自分でも扱いにくくなります。

けれど、

気になっていたのは、

謝ってもらえたかどうかとは、

少し違うところだったのかもしれません。

温度差観測


謝った側から見れば、

傷つけるような言い方をしてしまった。

だから、

そのことについて謝った。

「ごめん」

「言いすぎた」

「そんなつもりじゃなかった」

どれも、

その場を終わらせるためだけの言葉ではなく、

本当に悪かったと思って出たものだった可能性があります。

一方で、

受け取った側に残っていたのは、

言われた言葉そのものだけではありませんでした。

みんなの前で軽く扱われたように感じたこと。

自分の話だけ、

簡単に流されたように感じたこと。

そこまで大切に考えてもらえていなかったように感じたこと。

何に引っかかっていたのかは、

その場では自分にも、

まだはっきり分かっていません。

だから、

「大丈夫」と答えました。

相手は謝るところまで進んでいた。

こちらは、

自分が何に傷ついたのかを、

まだ探している途中だった。

同じ会話の中にいても、

二人が立っていた場所は、

少し違っていたのかもしれません。

あとになって、

ようやく言葉になることがあります。

謝ってほしかったと思っていた。

でも、

本当に残っていたのは、

「そこが嫌だったんだね」

と分かってもらいたかった気持ちだったのだと。

それは、

相手の謝罪が足りなかったという話ではありません。

こちら自身も、

その時にはまだ、

うまく説明できなかったことでした。

ここまで読んで、
少し思い当たることはありましたか。
ここで少し整理してみます。

ちょっとあるある


・謝ってもらった直後は、「もう大丈夫」と思っている。

・一人になってから、別の部分が気になり始める。

・謝罪の言葉より、その前後の会話をよく覚えている。

・「もう謝ってくれたから」と、自分に言い聞かせることがある。

・何が嫌だったのか、あとから言葉になる。

空気診断

今の自分に近いものがあれば、
一つだけ心に置いてみてください。

【タイプA】

謝ってくれたことは、

きちんと受け取っています。

それでも、

少しだけ残っているものがあります。

【タイプB】

その場では「大丈夫」と答えました。

あとになって、

引っかかっていた場所が見えてきました。

【タイプC】

謝罪の言葉より、

「なぜあの言葉が嫌だったのか」を考えています。

【タイプD】

相手が分かっていなかったと、

決めたいわけではありません。

自分自身も、まだ説明できていなかった気がします。

【タイプE】

欲しかったのは謝罪そのものより、

自分が傷ついた場所を一緒に見てもらうことだったように感じています。

こんな返し方もあります

正解ではありません。
今の距離感に近いものがあれば、一つだけ持ち帰ってください。

① やわらかめ

「謝ってくれてありがとう。たぶん、言われたことより、少し置いていかれた感じが残ってたみたい」

謝罪を受け取りながら、

自分の中に残った部分も伝えられます。

② 少し自然に

「もう怒ってるわけじゃないんだけど、私はそこが少し引っかかってたみたい」

相手を責めず、

今分かってきた気持ちをそのまま話せます。

③ 仲が良い相手向け

「謝ってくれたのは分かってるよ。ただ、私はあの言い方がちょっと寂しかったみたい」

近い関係なら、

何が残っていたのかを具体的に伝えやすい言葉です。

④ 空気をやわらげる

「その時はうまく言えなかったんだけど、少しだけ聞いてもらってもいい?」

結論からぶつけず、

もう一度話すための入口を作れます。

⑤ 少し違う見方

「今になって分かったんだけど、謝ってほしかったというより、何が嫌だったかを知ってほしかったのかも」

時間がたってから見えてきた気持ちを、

相手の謝罪を否定せず伝えられます。

こんな返しは少し気をつけたい

同じ言葉でも、
相手によって受け止め方は少し変わります。

① 強く聞こえやすい

「謝ればいいと思ってる?」

気持ちが残っている時には出やすい言葉ですが、

相手の謝罪そのものを否定されたように聞こえることがあります。

② 誤解されやすい

「全然分かってないよね」

本当に伝えたいのは傷ついた部分でも、

相手そのものを否定する言葉として届く場合があります。

③ 相手を急がせやすい

「何に謝ってるか分かってる?」

確認したい気持ちは自然ですが、

その場で正しい答えを求められたように感じることがあります。

④ 理由を求め過ぎやすい

「どうしてあんなこと言ったの?」

理由を知りたい時の言葉ですが、

本人にも、その時の言葉をうまく説明できない場合があります。

⑤ 距離感によって変わりやすい

「もういい」

会話を終えたい時には必要な言葉です。

ただ、本当はまだ話したい気持ちがある場合、その入口まで閉じてしまうことがあります。

最後に、少しだけ


謝ってもらったのに、

気持ちが残る日があります。

謝罪を受け入れていないからとは、

限りません。

自分でもその時には、

何に傷ついたのか、

まだ分かっていなかった。

相手も、

どこまで分かればよかったのか、

知ることができなかった。

二人とも、

それぞれの場所から、

同じ出来事を見ていたのだと思います。

この話が少し気になった方へ。
やわらか返信室では、
現在は主に4つの企画を書いています。


📮少し昔の相談員が現代の悩みに答える話


📰編集部がどうでもいいことを真面目に考える雑誌


🌙生活の途中で思い出す、景色や気持ちの話


📖人間関係の小さい温度差を観察する話


もし今回の記事が少し気になったら、

他の企画や自己紹介ものぞいてみてください。

どこかで、自分だけだと思っていたことに出会えるかもしれません。

最後にひとつだけ


「ごめん」は届いていました。

まだ言葉になっていなかったのは、傷ついた場所の方でした。


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