高知を綴る、7月のきろく
夏休みに入ったばかりの土曜日。夫のライブに行こうと、娘とタクシー乗り場へ向かった。すると、いつもなら数台いるはずのタクシーが一台もいない。もう夕方だというのに、熱々になった道路からモワッとした空気が漂っている。
しばらく待ってみたものの、あまりの暑さに「今日は諦めて引き返そうか。ライブはまた行けるやん」と提案する。娘は泣きそうになりながら「行きたい」とふくれる。タクシーアプリを使っても「車両が見つかりません」と表示される。
「どうしようもないやん」とイライラしながら娘と言い合いしていると、おなじくタクシーを待っていると思われるおじいちゃんと目があった。目があうと話しかけるのが高知の人。「どこまでいくが?」
行き先を話すと、おじいちゃんは「呼んでるから。自分は途中で降りるけど、そのまま乗って行ったらえい」という。よくわからず、返答にこまっていると「すぐ来るから安心したらえい」。
「……」
「…割り勘しよ」
まさかの相乗り?!初めての高知でカルチャーショックを受けてから、この土地の「外国っぽさ」には慣れてきたつもりだった。とはいえ、娘も連れてるし、見知らぬ人と乗るのはさすがになぁと思い「いやいや!私もタクシー呼んでみます!このあたりだと、どこの会社がいいですかね?」とスマホを触っていると「いいから、いいから」と、にこにこのおじいちゃん。
「ほら、きたよ」
一台のタクシーがおじいちゃんの前にとまった。扉が開くと、中にはちょこんとおばあちゃんが乗っている。一瞬、おばあちゃんが降りるものかと思ったけど、そうではなさそう。「どうぞどうぞ」とおじいちゃん。おどろくおばあちゃん。戸惑う我々。早く乗ってよという顔の運転手さん。
これ以上断り続けるのも何かちがう気がしてきて、とりあえずタクシーに乗り込むことにした。おばあちゃんも、運転手さんもいるし。ここは高知だし。なにごとも経験である。
私は助手席。後部座席にはおじいちゃんとおばあちゃんと娘。ふたつの行き先を告げ、タクシーが動きだす。
おじいちゃんたちは、これから飲みに行くところだという。場所は私たちが向かう目的地の途中だった。固まる娘に優しく話かけてくれている。よくわからない展開だけれども、そもそもタクシーに乗れただけでもありがたいし、割り勘じゃなくて全部払おうと思っていると「これ!」とおじいちゃんに2千円手渡された。
いやいやいや多すぎるんよ、おじいちゃん。おじいちゃんたちの目的地までは半額で着くはず。遠回りするわけでもないので「いいです!お金は私が払います!」と言って返そうとするも、全く受け取ってくれない。
「じゃあ、半分だけいただきます!」。そう言って1000円返そうとすると、「よし、わかった!」と受け取って「はい!」と娘に渡すおじいちゃん。「いいの?」という顔でこちらを見てくる娘。よくないねん。隣からおばあちゃんが「夏のお年玉やと思ったらいいよ」。わぁ!いいフレーズ!……ちゃうねん!親切がすぎるねん!
「これは出会った縁やから」おじいちゃんにそう言われて、なんだかもう何も言えなくなり、結局2000円受け取ってしまった。
「これからどこ行くの〜?」「パパのライブ!」などと話してるうちに、おじいちゃんたちの目的地に到着。助手席から後部座席に移ろうとしていると、なんと自分たちのお会計を済ませているおじいちゃん。「まってええええ!お金返しますうううう!」
おじいちゃんたちは「じゃ」と手をあげ、するりと居酒屋へ入っていってしまった。
取り残された私と娘。「乗りますか」と運転手さん。乗ります……。ふわふわした気持ちのまま、ライブ会場へ。うん、いいライブだった。
ライブが終わって、さっそく知人にその出来事を話したら「それが起こるのが高知やき!」と笑っていた。そうだった、だから移住したんだった。困った人を見ると放っておけない高知の人になりたくて。
おじいちゃんたちにまた会えるといいな……会えるのが高知やな。お返ししたいな。おじいちゃんにも、知らない人にも。私のパワースポットに移住して丸二年。まだまだ高知に惹かれ続けている。
































夏すぎて、夏!って感じの高知。友人が遊びにきたり、よさこいがあったりと、毎年夏が足りないのです。8月も楽しみ!
