『先生、最後に忍耐力を手に入れました。』
「先生、7年間お世話になりました!」
小学6年生の男の子が、最後のレッスンの日にそう言いました。
そして続けて、
「最後、忍耐力を手に入れました!」
……忍耐力って、アイテムみたいに言うやん🤣
思わず笑ってしまいました。
でも、この言葉を聞いた時、
「あぁ、本当に手に入れたんやね」
とも思いました。
「僕、月光が弾きたいです」
少し前、彼は『乙女の祈り』に挑戦していました。
かなり頑張っていたのですが、速く弾く部分がどうしても難しい。
そこで一度、この曲から離れることにしました。
そんな彼が次に持ってきたのが、
「先生、僕、月光の第一楽章が弾きたいです」
という希望でした。
ベートーヴェンの『月光』。
私は、
「頑張れば弾けると思うよ。
でも結構時間かかると思うし、忍耐力もいると思うよ!」
と伝えました。
すると彼は、
「僕、忍耐力ないんです。他の場面でも」
と言いました。
そして、
「だから、ピアノで忍耐力を鍛えたいです!」
と。
そこまで考えて選んだのか😂
「分かった!
たぶん途中で逃げ出したくなるところもあると思う。
でも、そこを越えたらやっぱり素敵な曲だし。やり甲斐もあると思う!
忍耐力もつくと思うよ😂」
そう言って、『月光』への挑戦が始まりました。
頑張ることと、全部一人でやることは違う
実際に始めてみると、やっぱり簡単ではありませんでした。
楽譜を見ながら、
「うわ、ここシャープだらけやな🤣」
となるところもありました。
そこで私は、
「この部分だけ、音をカタカナで書いてしまっていいよ!」
「シャープのところは、分かるように印つけとこ!」
と伝えました。
忍耐力を鍛えたいからといって、
全部を根性だけで乗り越える必要はないと思っています。
分かりにくいなら、分かりやすくしたらいい。
見落とすなら、見落としにくい工夫をしたらいい。
助けられるところは助ける。
でも、弾くのは本人です。
その部分以外は音も書かず、彼は自分で楽譜を読みながら、少しずつ進めていきました。
そして、本当に弾けるようになった
時間はかかりました。
でも彼は、逃げ出しませんでした。
少しずつ、少しずつ。
とうとう『月光』第一楽章を最後まで弾けるようになりました。
それだけではありません。
発表会では、暗譜。
最後まで自分の力で演奏しました。
「忍耐力を鍛えたい」
そう言って始めた子が、本当に最後までやり切りました。
「今日で僕はピアノを卒業します!」
そして最後のレッスンの日。
「先生、7年間お世話になりました」
そう言ったあと、
「最後、忍耐力を手に入れました!」
と笑って、
「今日で僕はピアノを卒業します!」
と言いました。
私はまた笑ってしまいました🤣
忍耐力って、ゲームのアイテムみたいに手に入れるものなん?🤣
でも、考えてみたら本当にそうなのかもしれません。
最初から持っているものだけで進まなくてもいい。
できないことに出会って、
工夫して、
時には誰かに助けてもらって、
それでも自分で少しずつ進んでいく。
そうやって、
「前の自分にはなかったもの」
を一つずつ手に入れていく。
7年間ピアノを習った彼が、
最後に持って帰ったもの。
それは『月光』を弾けたという経験だけではありませんでした。
本人が欲しいと言って、
自分で挑戦すると決めて、
時間をかけて手に入れたもの。
「忍耐力」
だったのかもしれません。
ピアノを卒業したこれから先、
どこかで「もう無理かも」と思うことがあった時、
発表会で『月光』を最後まで弾いた自分を、
ふと思い出してくれたらいいなと思います。
7年間、本当によく頑張りました。
忍耐力、獲得おめでとう🤣
そして、
ピアノ卒業、おめでとう。
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