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ダチョウ観察記録㉔調理器具の使い方

我が家にはダチョウがいる。

57歳のオスである。

ダチョウは料理をする。

もっとも、それは家事育児をほぼ何もしないダチョウに、何かひとつくらいは担当させようという苦肉の策で与えられた役割である。

先日、ダチョウがドリアを作った。

熱々のドリアがグラタン皿に盛り付けられ、食卓へ運ばれてくる。

子供たちの皿の下には木製の鍋敷き。

正しい。

ところが、私の皿だけ様子がおかしい。

なぜか鉄製のグリルトレーの上に置かれていたのである。

いや、待て。

それは鍋敷きではない。

むしろ熱を伝える側の道具ではないのか。

案の定、触ると熱い。

なぜ数ある道具の中から、それを選んだ。

私には分からない。

いや、たぶんダチョウ本人にも分かっていない。

また別の日。

我が家には少々値の張るフライパンがある。

昨年の初売りで購入したもので、汚れが付きにくく、長く使えることが売りの商品だった。

ところが、使い始めてしばらくすると、表面に傷があることに気付いた。

5〜6cmほどの直線で、やや深めのものが数本。

私は不思議に思っていた。

スポンジの硬い面で洗ったときについたのだろうか。

それとも、ダチョウがこびり付きを金属製の何かで削ったのだろうか。

しかし先日、その謎は解明された。

ダチョウがステーキを焼いていた時のことである。

フライパンの中で肉を焼きながら、突然ナイフで肉を切り始めたのだ。

焼け具合を確認したかったらしい。

私は全てを理解した。

傷の原因は、それだったのか。

フライパンの表面にナイフを当てながら肉を切る。

傷が付かない理由が見当たらない。

おまえのせいだとは確信していたが、

やっと理由が分かった。

不覚にも、安堵する。

ダチョウは道具を用途ごとには認識している。

・グリルトレーは熱いものに使う道具

・ナイフは肉を切る道具

そこまでは合っている。

問題は、その先である。

熱いものを置くなら何の上に置くべきか。

肉を切るならどこで切るべきか。

そういった発想が、抜け落ちている。

その結果、調理器具たちは次々と本来の想定外の使われ方をすることになる。

ダチョウ飼育においては、時折こうした現象が発生する。

原因はだいたいダチョウなのだが、

理由までは分からないことが多い。

飼育員は今日もまた、新たな調理器具の犠牲者が出ていないか、台所を見回るのであった。


このシリーズは1話から読むことをオススメします


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