ダチョウ観察記録㉗ 「・・・」
我が家にはダチョウがいる。
57歳のオスである。
ダチョウには、ときどき返事がない。
「返事をしない」のではない。
「返事が存在しない」のだ。
先日、13時からのイベントへ向かう途中のこと。
私は事前に、
「その前にどこかで昼食を食べてから行こう」
とダチョウに伝えていた。
ただ、店までは決めていなかった。
ある程度車を走らせたところで、運転手であるダチョウが駐車場を探し始めた。
「とーちゃん、何で車止めようとしてるの? トイレ行きたいの?」
と子どもが聞く。
「いや、違う。」
「じゃあ、何でなの?」
「何で・・・」
……止まった。
答えられない。
なぜか分からないが、本能に誘われて車を止めようとしていたのだろうか。
渡り鳥が磁場を感じて移動するように、ダチョウにも人知を超えた方向感覚が備わっているのかもしれない。
しかし後に判明したところによると、単にその近くの飲食店で昼食を摂るつもりだったらしい。
だったら、なぜその時に、
「お昼食べようと思って」
の一言が出てこなかったのか。
私には、よく分からない。
ダチョウの頭の中では、すでに話が完結している。
しかし、その途中経過は周囲には共有されない。
だから、観察者たちは時折、ダチョウの行動原理を推測するしかなくなるのである。
「・・・」
それもまた、ダチョウの生態の一つなのかもしれない。
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