【小説・ヴィーナス症候群】(566)なぜ女の子は脚を出すの?
フリーライターの神俣葵は、大学時代の親友・柿野真奈美と、久しぶりに都内のカフェで向かい合っていた。
「真奈美、沖縄から帰ってきてたんだね」
「そうなの。国家公務員の旦那が本省に戻って来いって辞令もらって。また毎日電車に揺られてつらいみたい」
「でも、いろんな所に住めるって面白そうじゃない?」
「全然面白いことないわよ。役所の手続きとか、子どもの転校とか……」
真奈美はアイスコーヒーのグラスを指で転がしながら、少し顔をしかめた。
「でもダイビングとか、いろいろ行くんでしょ?」
「そんなの最初のうちだけ。すぐやることなくなってさ。子どもを学校に送り出したら、公園のベンチでぼんやりしてたりするわけ」

しばらく雑談が続いたあと、真奈美は急に話題を変えた。
「でね、公園で子供たちが遊んでるのを眺めながら思ったんだけど……女の子ってさ、なんで脚出すんだろうね?」
「え? え?」
葵は思わず聞き返す。
「いや、考えたってしょうがないのは分かってるんだけどさ。沖縄ってほとんど夏じゃん。だからみんな短パン履いてるんだけど、男はさ、ハーフパンツみたいな太もも隠すやつばっかりなのに、女はショートパンツみたいな太もも丸出しのが多くてさ」
「うん……」
「この前も、山で変な写真撮って炎上した大学生たち、いたでしょ。あれもさ、別に炎上の中身より、写ってる格好のほうが気になっちゃって。男はハーパン、女はショーパン、ってはっきり分かれてて」

「そういうとこ見てたんだ」
「私、脚太くてコンプレックスだからさ。余計そう思ったのかもしれないけど……まあ、葵みたいにスタイルいいなら、そんなこと気にしないのかもね」
葵は少しだけ笑ってから、首を横に振った。
「スタイルがどうとかじゃないんだよね。うちらみたいなロボット女には、それなりに事情があるっていうか……『私ロボットじゃないもん!』って主張みたいなところがあってさ」
「なるほどね」
「だから脚出したがる、ってのは結構あるんだよ。最近、私らみたいな子たちの文集も出たんだよ。『怒りと悲しみと抵抗のミニスカート』って」(第416話)
真奈美は小さく息を吐いた。
「そっか。男にいやらしい目で見られるとか、その前の話なんだね」
「そうそう。ヴィーナス児同士だとさ、いやらしい目で見てくれる男、そもそもいるんかね、って話にもなるし」
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