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登り続けるために


白山から戻ってからも
師匠の元気な限りできるだけ山に行きましょうと、その後も山に登った。

ただ師匠はこんなことも教えてくれた。

「一人で山に行くのも楽しいけれど、
やっぱり登山の幅を広げるためにも
山仲間はいた方がいいよ」

*****
師匠は、自分の長年の山仲間たちを
たくさん紹介してくれた。

それだけじゃない。

私のパパ友やママ友で、
「これから山を始めてみたい」というメンバーまで、

師匠は一緒に山に連れて行ってくれた。
  

師匠やうちの主人、
パパ友、ママ友たちみんなで
京都トレイルへ。


*****

私は昔から、
何でも一人でやろうとするところがある。

人に頼るのが、どこか苦手で
申し訳ないと思っている。
すべてなんとか自分でして当然だ。
そう思って、生きてきた。

ソロ登山も楽しいけれど、 
仲間と行くことで、自分だけでは気づかなかった景色に気づいたり
いざというとき助けあったりすることができる。

そのことを、師匠は、
言葉よりも先に、
こうして仲間の輪の中に私を入れることで、教えてくれた気がする。

*****

師匠は、たくさんの仲間を紹介しながらこう言った。

「森さんにはずっと山に登り続けてほしいなあ。

まあ、きっと言わなくても、君は登り続けるだろうけどね笑」

その後も、できるだけ好きな山に登りたいと、
  
これまで師匠が登ったことがある山や
まだ行ったことがなかった山をたくさん調べて
私や山仲間を誘ってくれた。

山仲間との下山後の乾杯🍻


*****

そうこうしているうちに、年が明けた。

少しずつ体調が優れない日が出てきているという師匠に
思い切ってこんなメールを送ってみた。
  
「2026年の初登りに、
ポンポン山あたりにコーヒーでも飲みに行きませんか?」
  
ポンポン山はまさに、初めて師匠が私と娘を連れて行ってくれた山である。
  
当時より、
登山口までのアクセスが悪くなっていたのと、師匠の体力的にも少し不安があったので
  
ポンポン山に連なる大沢山の展望台を
目的地に定めた。
  
いつも師匠が作ってくれる登山計画やルートも
初めて私が作ってみた。
  
そんな計画やルートを共有する必要もないほど、
師匠にとっては数えきれないほど登っているホームの山だ。
  
とても嬉しそうに登山口の柵を開けて
歩き始める後ろ姿を見ていると
これまでと全く変わらない、山登りが大好きな元気なおじさんだ笑。
  
里山の冷たい澄んだ空気がとても気持ちいい。
  
1時間ほど歩き展望台に着くと
ベンチに座り、ジェットボイルでお湯をわかし、コーヒーを淹れる。

眼下に広がる景色を眺め、
鼻を啜りながら飲む
あったかいコーヒーが身体に沁みた。
   
「やっぱり違うねぇ」
  
その場所は、かつて初めてポンポン山を登る時に師匠が
「この山は、ここからの眺めが、
一番綺麗なんですよ」
と教えてくれた場所だ。
   
あの日から振り返ると、本当にたくさんの山に連れて行ってもらった。
  
まさか週末ごとに山に行きたくなるほど、
山登りが好きになるとは誰が想像しただろう。
  
コーヒーを飲みながら、
ただただ感謝の気持ちが溢れてきた。
  
これが師匠との最後の山登りだった。

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