【性別不問声劇】ホワイトクリスマス
主人公のモノローグに、二人のセリフが少し入る構成となっています。
一人で読んでも二人で読んでも構いませんが、セリフバランスが悪いことはご承知おきくださいませ。
どちらの役をどの性別で読まれても構いません。
一人称・二人称、語尾は言いやすいように換えてもらって大丈夫です。
約930文字
駅前には、賑わう人々。
どこからともなく流れてくる、軽快なクリスマスソング。
騒(ざわ)めく足音すら、どこか楽しげなその人たちに、私はそっと背を向けた。
今年はひとりぼっちのクリスマスか。
色とりどりのイルミネーションが滲(にじ)みそうになるのを、
上を仰ぎ見てなんとか堪(こら)える。
どうして、あんなしょうもないことで喧嘩してしまったのだろう。
大切な時間だった。
大切な人だった。
笑ってばかりだったのに。
思い出すのは楽しかったことばかり。
そして、なくてはならない存在だったと気付くのは、失ってからなのだ。
寂しさと寒さから首元のマフラーに顔をうずめるようにした瞬間、
ふわり ふわりと
白い綿雪が舞い降りてきた。
「雪……」
思わず声に出したのは、懐かしい声を同時に思い出したから。
『クリスマスプレゼントには雪を降らせようか』
クリスマスなら、ホワイトクリスマスがいい。
そう言った私に、あの人が笑顔で言った言葉だった。
暖かい地域で生まれた私にとっては、雪の降るクリスマスが子供の頃から憧れだった。
そして、その雪を大切な人と見ることが、いつしか私の夢になっていた。
今年も、一緒に過ごしたかったのに。
俯きながら、バス停への階段へ向かおうとしたその時、
『クリスマスプレゼント、ちゃんと届いた?』
ずっと、ずっと聞きたかったその声が、
私のすぐ後ろから掛けられたのだ。
振り返ると、嬉しそうに、申し訳なさそうに、はにかんだ顔のあの人がいた。
『雪のクリスマスを、君に届けたくて。』
たくさん言いたいことがあるのに、言葉が出てこない。
言葉の代わりに、涙が溢れてしまう。
『ごめんね。あの時、もっと君の気持ちに寄り添えていたら良かったのにって、すごく反省したんだ。』
私は必死に首を振る。
「悪いのは、私の方。本当に、本当にごめんなさい!」
大丈夫だから、と、あの人は少しだけ笑って手を差し出した。
『メリークリスマス。ご一緒に、紅茶でもいかがですか?』
私はその手をそっと握る。
温かくて、優しい手。
「夢みたい。」
『夢みたいなことがあってもいいじゃない、クリスマスなんだから。』
さっきまで、音も光も冷たく感じられたのに。
今は、こんなにも暖かい。
今度こそ、
かけがえのないこの人のことを
大切にしなくてはと、
まだ口に出せないその誓いを
心の中で自分に約束した
雪の、クリスマス。
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