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丘の上で見た「小さな手の痕」

丘の上で見た「小さな手の痕」

これは、私がまだ個人事業主としてカメラマンをしていた頃の話です。
ある都市を拠点に、情報誌の特集ページや広告撮影の仕事をしていた私は、ある日ライターと一緒に、都市から離れた町へ取材に向かいました。道路は狭く、家々が密集していて、秋なのに蒸し暑い日だったのを覚えています。

午前から夕方まで5軒ほどのお店を回り、最後に夕方の風景撮影が残っていました。指定された場所は町外れの丘で、地図と住所を頼りに向かいましたが、なぜか目的地にたどり着けず、同じ場所をぐるぐる回っているような感覚に。ようやく「この辺りだろう」と思える広場に到着し、そこから機材を持って歩いて撮影を行いました。

撮影はなんとか間に合いましたが、ふと気づくと、異常な蒸し暑さが空気を満たしていました。まるでスチームの中を歩いているような、まとわりつく空気。ライターも私も、言葉にできない違和感を覚えながら車に戻りました。

そして、車に戻った瞬間、信じられないものを目にしました。
私の大きなワンボックスの車体に、無数の小さな手の痕がついていたのです。手の大きさからして、3歳から5歳くらい。車の横ならまだしも、窓の上や屋根近くにまで手痕がありました。そんな高さに子供が触れることは物理的に不可能です。

ライターは声を上げ、私は言葉を失いました。
その場からすぐに離れ、車内では無言のまま帰路につきました。2人とも、できれば「無かったこと」にしたかった。そんな気持ちでした。

今でも、あの蒸し暑さと、車に残された小さな手の痕を思い出すと、背筋がゾッとします。

※この話は制作した創作怪談です。語りの設計と構成力を活かした仕事の一例として記録しています。

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