畳で寝落ちした僕に毛布をかけた「犯人」【Day 16】
【これまでのあらすじ】 4年前の金銭トラブルで妻への信頼を失った僕。 再構築のために「妻を同僚になる」ことを目指しています。
▶第1話から読む(妻と「同僚」になることを目指した理由)
夜9時、スマホのSlackが鳴りました。
別チームから社長に、僕が担当しているプロジェクトに対する懸念が上申されたとのこと。リリースまであと2日というタイミングでした。
以前も同じチームとの議論があり、その時は社長がGoを出していました。だから今回も大丈夫だろう、と思っていました。
しかし翌日の昼、再び上司からSlack。
「今回は難しそう。なんとか反論するが、無理かもしれない。」
愕然としました。
半年間、ようやくここまで来たのに
沢山の人の知恵、協力、応援を受けながら、第一弾リリースとして市場に出してみよう、というところまでこぎつけた矢先でした。
懸念を上申した別チームの気持ちもわかります。このサービスがリリースされたら、そのチームにとって脅威になりうる。それは理解できます。でも大きく見れば会社にも社会にもプラスになるはずだと、一度は納得してくれたはずなのに。
「あのときああしておけばよかったのでは」
後悔がぐるぐると頭をよぎります。
さすがに今日は仕事になりません。僕はフレックスですし、その後の会議予定もありませんでした。早めに退勤することにしました。
ノンアルビールしかなかった
帰宅後、冷蔵庫を開けました。ヤケ酒を飲もうと思ったのですが、冷蔵庫にあったのはノンアルビールだけでした。それでも飲みたくて、ノンアルの缶を開けました。
畳に寝っ転がって、天井を見つめます。
別チームの上申内容を想像します。僕たちの反論を想像します。社長の判断を想像します。でも、どれも想像でしかありません。あのときああしておけばよかった。そんな後悔ばかりが浮かんできます。
気づいたら、眠っていました。
起きたら夜だった
目が覚めると、すっかり夜でした。
ノンアルビールはぬるくなっていて、子供たちはテレビを見ていました。夕飯も食べ終わったらしい。妻は風呂に入っているようです。
お腹に毛布がかかっていました。

「毛布かけてくれたの?」
長男に聞くと「ううん、僕じゃない」。
次男にも聞くと「違うよ、いつの間にかかかってた」。
犯人は今お風呂に入っている人です。
誰にも気づかれないように
僕は妻を「同僚」として扱うようにしています。4年前の金銭トラブル以降、感情的なもつれを避けるために、そう決めました。
でも、同僚は普通、畳で寝落ちした相手に毛布をかけたりしません。それも、子供たちにも気づかれないように、そっと。
夜ふかしすることにした
夕方から眠ってしまったので、全然眠くありません。
久しぶりに夜ふかしをしよう。時間がなくて見れていなかったスポーツの試合を見よう。
リビングのソファに座り、タブレットで試合を再生しました。音量を下げて、イヤホンをつけます。毛布は、そのまま膝にかけています。
プロジェクトはポシャりました。半年の努力は水の泡です。これは事実です。でも、今夜の僕には毛布があります。
「感情の起伏を排除し、システムで生きる」
それが僕の生存戦略です。妻とは「同僚」として、ドライに関係を保つ。
でも時々、システムの外側から、毛布がかかることがあるのかもしれません。それが何を意味するのか、今の僕にはわかりません。ただ、今夜は毛布をかけたまま、スポーツ観戦を楽しもうと思います。
業務時間外ですので。
