題『藍』
「よっ、重っ!」
洗濯機の中からジーンズを取り出した。
大学に入学に合わせて一人暮らしを始めてから自分用に買ったジーンズだ。
室内物干しに広げて干したらポタポタと水が落ちてきた。
「なんで⁉︎」
「生地が厚いとそうなるよね」
「えー、マジでー」
友人のエミナに聞いてみるとそんな風に言われた。
わたしがジーンズを買おうと思ったのは、エミナが高校時代から着てて、
かっこよかったから。
「言われた通りに脱水1回にしたのに」
「取った時重たかったでしょ。水吸ってるから。だから軽く絞ってからの干したらいい」
「先に言ってよ」
「悪かったって、いつもやってて気にして無かったらか、忘れてたんだよ」
この後も軽く話してそれぞれのバイトへ向かっていった。
「女がズボンなんぞ履くと碌なことにならん」
そう言って父親は母さんやわたしにスカートを強要していた。
これ以外にも色々フザケルなってことは大量に言われたけど、思い出したくない。
積もり積もった鬱憤が爆発して、母さんが離婚届を父親に叩きつけて、
父親もその場の勢いで名前を書いて、晴れて離婚が成立したのだった。
これが高一の時だった。
しかも4月終わりの時で、精神的に不安定気味だった頃にことが起こったので、
わたしも父親に爆発するは、母さん爆発するはで散々だった。
母さんへはきちんと謝って、今ではメッセを毎日やれる関係になっている。
「乾いてるかなぁ」
バイト終わりに暗い部屋に入ると、少し臭いがしてきてた。
明かりをつけて、触ってみると、意外と乾いている。
あんなに水を吸っていたのに、すっかり元の状態に戻っていた。
それを見ているとなんだか、今すぐ履きたい!今!直ぐに!と天使か悪魔か分からない囁きが頭の中にハウリングして来ている。
いや、落ち着けわたし!エミナならどうするか考えなさい!エミナならこんな時は!
『いつやるの?今でしょ!』
顔真似つきで想像してしまった。
ジーンズを持っている女がいきなり笑い出して倒れ出したのを、人に見られたらかなりの不審者にしか見えないなあ。
そんなこと考えたら、さらにツボのハマって笑い転げてしまった。
「いてっ」
椅子にぶつかった。
履くのは今度エミナと遊びに行く時に決めて、今はしまっておくことにしている。
しまってしまう前に、もう一度ジーンズの青さに高校時代を思い出す。
『え?この青いズボン?かっこいい?
‥‥そう?へへ、ありがと。これね、ジーンズってんだ。
あと青っていうより藍色なんだ』
離婚してわたしは、母さんと暮らすようになったけど、家計のために忙しく働く母さんが家に居ない時間が多くなって、すごく寂しかった。
それを紛らわすために、スマホ用に自分でバイトしたいって許してもらった。
エミナとはバイト先で知り合って、友達になった。
今に思えばジーンズ好きに対してかなり失礼じゃないかしら。
ははっと乾いた笑いをしながら、次の約束のためにしまっておく。
二人で同じ藍色のジーンズを履いて遊びに行くのを、夢に描きながら、
パタンと眠りに沈んでいった。
あとがき
500文字前後を目指しているのに、なんでか倍量になってる。
書きたいものを、となっているが何を書きたいのかいまだに定まってない。
今回も着地地点がウロウロしてしまって、それに時間がかなりかかってくる。
とにかく書くだけじゃあどうしようもない。
でもなあ、ただ書きたいだけでもあるんだよなあ。
とりあえず、このまま好き勝手に書いていこう。
日付変わっているけど、明日の私へのお題は、
『琥珀色』(アンバー)です。
頑張れ、明日の私、なんとかしてください。
