「すぐ答えてもらう」が、学びを浅くしていた
問題を解いていて、行き詰まった。
「答えを教えて」と頼んだ。
すぐ教えてもらった。「わかった」と思った。
でも翌週、同じ問題がまた解けなかった。
スキナーの「夢の機械」が、学校から去っていった
1953年、ハーバード大学の心理学者B・F・スキナーは、
「ティーチング・マシン」を発明した。
小さな箱型の装置で、問題を出し、
生徒が答えを入力すると、即座に正解・不正解を知らせてくれた。
スキナーは確信していた。
「行動の直後にフィードバックを与えることが、最善の学習を生む」
この確信には動物実験の裏付けがあった。
行動の直後に報酬を与えると、その行動は強化される——
それはネズミでも確かめられた原理だった。
1960年代、ティーチング・マシンはアメリカ全土に広まった。
学校に何万台も設置された。
しかし20年後、多くの学校からその機械は姿を消した。
研究が積み重なるにつれてわかってきたことがあった。
概念を理解するような学習では、
即時フィードバックよりも「少し遅れたフィードバック」のほうが、
深く学べることがある——
「すぐに正解を教えること」が、「考え続ける時間」を奪っていた。
褒め方ひとつで、挑戦する子どもが変わった
1990年代、心理学者のキャロル・ドゥエックは実験をした。
400人の子どもたちに問題を解かせ、2グループに分けて言葉をかけた。
Aグループ:「あなたは頭がいいね」
Bグループ:「よく頑張ったね」
その後、難しい問題と簡単な問題を選ばせると——
「頭がいい」と言われた子どもたちは、簡単な問題を選んだ。
「頑張ったね」と言われた子どもたちは、難しい問題に挑んだ。
「頭がいい」と言われた子どもは、その評価を守ろうとした。
難しい問題に挑んで失敗すると「頭がよくない」ことになるから、
難しいことを避けるようになった。
フィードバックの言葉ひとつが、
子どもの「挑戦するかどうか」を変えていた。
「正解かどうか」より「どうやったか」を
心理学では、フィードバックを2種類に分ける。
「結果の知識(KR)」:正解か不正解かの情報。
「遂行の知識(KP)」:どのようにやったかの情報。
「今のシュートは外れた」と言うコーチと、
「膝の角度をこう変えると、次は入りやすい」と言うコーチ——
どちらが選手の次の行動につながるか。
「正解かどうか」だけを教えても、
「どのプロセスが惜しかったか」は伝わらない。
AIのフィードバックは何に注目しているか
AIは即時に、正確に、正解かどうかを教えてくれる。
でも——AIが返す情報の多くは「結果」だ。
「あなたの考え方のどこが惜しかったか」
「このアプローチのどこがよかったか」
そこへの注目は、難しい。
スキナーの機械が学校から去ったのは、
速さが問題だったのではなく、
「何に注目していたか」が問題だったのかもしれない。
「すぐ答えを教えてもらう」と「少し待ってから教えてもらう」は、学びとして同じでしょうか。
「頭がいいね」と「よく頑張ったね」では、次の挑戦にどんな違いが生まれるでしょうか。
AIのフィードバックが「速く正確」なことは、学びにとって何かを失っているでしょうか。
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