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150人を超えると、何かが壊れる

フォロワーが増えるほど、なぜか孤独になる。

SNSを開くたびに疲れるのに、閉じられない。
たくさんの人とつながっているはずなのに、つながれていない気がする。


工場が150人を超えると、社長は新しい工場を建てた

ゴア・テックスというブランドを知っているだろうか。

防水透湿素材として知られるGORE-TEXを作ったW.L.ゴア社は、
奇妙なルールで有名だ。

工場の従業員が150人を超えそうになると、新しい工場を建てる。

社員を増やさないのではない。150人を超えた分は、別の場所に移す。

創業者ウィリアム・ゴアはこう言った。
「150人を超えると、誰もが全員の顔を知ることができなくなる。
そうなった瞬間に、何かが変わる」と。

彼がこの方針を始めたのは1970年代。
ダンバー数の研究が発表される20年以上前のことだ。

カナダの共同体は、150人で自然に割れる

ハッターライトというキリスト教の共同体がある。

16世紀に始まり、現在もカナダやアメリカに約500のコミュニティが存在する。
彼らは農場で共同生活を営み、財産を共有する。

そのコミュニティには、長年にわたってひとつの傾向があった。

集落の人口が150人前後に達すると、自然に二つに分かれる。

ルールとして決まっているわけではない。
でも、数世代にわたって繰り返されてきた。

リーダーたちはその理由をうまく説明できなかった。
「そのくらいになると、みんなの顔を思い浮かべられなくなる」と言う人もいた。

霊長類学者が数字を出した

1992年、ロビン・ダンバーというイギリスの霊長類学者が一本の論文を発表した。

チンパンジーのグルーミング(毛づくろい)を観察していた彼は、
ある法則に気づいていた。

霊長類は、脳の大きさと集団の大きさが比例する。

ニューロコーテックス(大脳新皮質)の比率が大きいほど、より大きな集団で暮らす。

その法則を人間の脳に当てはめると、安定して維持できる関係の数は——約150人になる。

ダンバーはそれを「ダンバー数」と名付けた。

工場の経営者も、宗教共同体も、独立して同じ数に辿り着いていた。

ローマ人も、中世の村人も、同じ数の中に生きていた

ダンバーが過去の記録を調べると、同じ数が繰り返し現れた。

ローマ軍の基本単位(マニプルス)は約80〜120人。
ケルト族の集落は150人前後で構成されることが多かった。
中世ヨーロッパの多くの村は、数百年にわたって150人以下で安定していた。

時代も文化も言語もバラバラなのに、なぜ同じ数が現れるのか。

ダンバーの答えは単純だった。
脳の設計が、そう決めているから。

150人を超えると、顔と名前と関係が一致しなくなる。
誰が信頼できて、誰がルールを破るかを追いかけることができなくなる。

そこで人類は、脳の外に仕組みを作り始めた。
ルール、法律、組織、制度——それらはすべて、150人を超えた集団を維持するための道具だった。

SNSの「つながり」は、どんな関係なのか

フォロワーが1万人いるとき、脳は何をしているのか。

「いいね」がつくたびに、脳は仲間からの承認として受け取る。
でも1万人分の評価を管理する回路は、脳の設計に存在しない。

ゴア・テックスの工場が150人で止まるように、
脳も処理できる関係には上限がある。

SNS疲れは、意志の弱さではないかもしれない。
脳が、設計外の負荷をかけられ続けているだけかもしれない。

顔の見える関係だけが、本物なのか

ではAIとの会話は、150人の中に入るのか。外なのか。

毎日話しかけるAIは、友人か道具か。
顔も身体も持たない存在との関係を、脳はどう数えるのか。

まだ誰も答えを出していない。

脳が「つながり」として認識するのは、何なのだろうか。
相手の顔を思い浮かべられることか。
声を知っていることか。
共に時間を過ごした記憶か。

150人という数は変わらない。
でも「何をもって関係とするか」は、まだ定義されていない。


「つながりとは、何でしょうか。」
「顔の見えない関係は、どこに分類されるのでしょうか。」
「150人の外にいる存在と、私たちはどう向き合うのでしょうか。」


ハルとおじいさん 9部|学びの地図



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