なぜ「手遅れ」のはずの目が、見えるようになったのか
大人になってから新しい言語を学ぼうとして、「もう遅い」と感じたことはないでしょうか。
子どものころにやっておけばよかった、と。
その「手遅れ」は、本当に動かせない事実なのでしょうか。
科学の世界でも、同じ思い込みが、長く信じられていました。
ノーベル賞が固めた「手遅れ」の常識
1960年代、生まれたばかりの子猫の片目を、一定期間だけ閉じて育てる実験が行われました。
その期間を過ぎてまぶたを開けても、その目は二度と物をはっきり見られるようにはなりませんでした。
脳の視覚野が、その時期のうちに固まってしまっていたのです。
この発見はノーベル賞を受賞し、「視覚には、子どものうちにしかない特別な時期がある」という考えを、科学界に決定づけました。
以来、何十年もの間、こう信じられてきました。
生まれつき目が見えない子どもは、2歳までに、遅くとも8歳までに治療しなければ、視力は永遠に戻らない、と。
12歳で光を取り戻した女性
2000年代初め、インドの研究者パワン・シンハは、あるプロジェクトを始めました。
先天性の白内障で目が見えないまま育った子どもたちに、無償で手術を届ける取り組みです。
多くの医師は、8歳を過ぎた子どもの手術には意味がないと考えていました。
「手遅れ」だと。
けれど、実際に手術を受けた子どもたちを追跡すると、違う結果が見えてきました。
12年間、光のない世界で育ったある女性は、手術を受けました。
20年後の検査で、彼女は物と物を見分け、奥行きを感じ取り、雑然とした風景の中から人の顔を見つけ出せるようになっていたのです。
「手遅れ」だと信じられていた場所に、まだ扉は残っていました。
決定的だと思われていた科学の常識さえ、書き換えられる余地があったのです。
AIの「いつでもやり直せる」も、本当だろうか
AIは、人間と違って、いつでも再学習できると言われます。
パラメーターを書き換えれば、何度でも新しく学び直せる、と。
けれど、人間の「手遅れ」という思い込みが、実は思い込みに過ぎなかったのだとしたら。
AIの「いつでもやり直せる」という前提も、本当にそのまま信じていいのでしょうか。
取り返しがつくかどうかは、やってみるまで、誰にも本当にはわからないのかもしれません。
それでも、扉を叩いてみる価値はある
子猫の実験は、確かに「時期の重み」を教えてくれました。
けれど、光を取り戻した女性は、「絶対」という言葉の危うさを教えてくれました。
あなたが「もう遅い」と諦めていることの中に、まだ開くかもしれない扉はないでしょうか。
閉じたと思っていた窓を、もう一度そっと押してみたら、何が起きるでしょうか。
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