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正しいことが、なぜ受け入れられないことがあるのか

「手を洗ってください」

それだけのことが、
ある時代には、誰にも信じてもらえなかった。

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手を洗うだけで、死亡率が10分の1になった病院

1840年代、ウィーンの産科病院で、
出産後の女性が、次々に高熱で亡くなっていた。

医師イグナーツ・ゼンメルワイスは、
あることに気づいた。

医師が、解剖室から、そのまま分娩室に来る病棟と、
そうでない病棟で、死亡率が、まったく違っていた。

ゼンメルワイスは、医師たちに、
塩素水で手を洗ってから、患者に触れるよう、指示した。

死亡率は、すぐに、10分の1近くまで下がった。


「目に見えない何か」を、誰も信じなかった

結果は、はっきり出ていた。

それでも、当時の医学界は、ゼンメルワイスの考えを、
ほとんど受け入れなかった。

「目に見えない何かが、手についている」という考えは、
当時の医学の常識とは、かけ離れていた。

それを受け入れることは、
「自分たちが、これまで、患者を死なせてきた」と、
認めることでもあった。

ゼンメルワイスは、同僚たちから、孤立し、
精神を病み、最後は、精神科病院で、亡くなったと言われている。

彼の発見が、正しかったと、広く認められたのは、
彼の死後、何年も経って、細菌の存在が、
科学的に確認されてからのことだった。


今も繰り返される、「ゼンメルワイス反射」

正しいデータを示されても、
それが、自分の信じてきたことと矛盾するとき、
反射的に拒んでしまう。

この現象には、後に、
「ゼンメルワイス反射」という名前がついた。

今、AIが医療現場で、新しい診断パターンを示しても、
すぐには受け入れられないことがある。

それは、AIが間違っているからではなく、
人間の側に、ゼンメルワイスの時代から変わらない、
同じ反射が、残っているからかもしれない。

データは、正しさを示せる。
でも、それを受け入れる速さまでは、保証してくれない。


「自分の中にも、ゼンメルワイス反射のようなものは、ないでしょうか。
正しいデータと、自分が信じてきたことが矛盾したとき、私たちはどちらを選ぶでしょうか。
AIが示すものを拒むとき、それは事実への反論でしょうか、それとも、ただの反射でしょうか。


Podcast で深く聴く|ハルとおじいさん 14部第4



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