見出し画像

なぜ、海の上で「今どこか」がわからなかったのか

今朝、少し道に迷いながら、なんとなくスマホの地図を開きました。

青い点が、迷いなく、僕の場所を教えてくれます。


「今どこにいるか」は、当たり前じゃなかった

地図の上で、自分の現在地を、一瞬で知ることができる。

そんなの、当たり前だと思っていました。

けれど、ほんの数百年前まで、大海原に出た船は、
自分が今、地球上のどこにいるのか、正確にはわからなかったのです。

緯度は、太陽や星の高さから、なんとか測れました。
でも経度は、まったく別の壁でした。

この壁の高さを、命がけで知ることになった人たちがいます。

大工の息子が、天文学者たちに挑んだ

1707年、イギリス海軍の艦隊が、自分の位置を見誤り、
イギリス南西部の岩礁に、次々と衝突する事故が起きました。

犠牲者は、およそ1400人。

この惨事を受けて、1714年、イギリス議会は「経度法」を定めます。
経度を正確に測る方法を見つけた者に、2万ポンドという、破格の賞金を出す。

そこに名乗りを上げたのが、ヨークシャーの大工の息子、ジョン・ハリソンでした。

正規の教育を受けていない、独学の時計職人です。

ハリソンは、海の上でも狂わない、精密な時計「クロノメーター」さえあれば、
経度を計算できると考えました。

しかし、審査委員会には、グリニッジ天文台長ネヴィル・マスケリンをはじめ、
月の観測から経度を求める方法を推す、天文学者たちが名を連ねていました。

彼ら自身も、その賞金を狙う立場だったのです。

身分の低い時計職人の成功を、快く思わない空気の中、
ハリソンは何十年もかけて、試作機を改良し続けました。

1764年、5作目の時計H4は、5か月の航海で、誤差わずか15秒という、
驚異的な精度を叩き出します。

それでも、賞金は、なかなか、支払われませんでした。

1773年、すでに80歳になっていたハリソンは、
ついに、国王ジョージ3世に、直接訴え出ます。

そうして、ようやく、正当な評価が、彼のもとに届いたのです。

見えない場所を、瞬時に知る時代

ハリソンが命がけで挑んだ「今どこにいるか」という問いに、
今、私たちはスマホひとつで、答えを得ています。

GPS衛星が、地球の周りを回り続け、
その電波を受け取るだけで、地図上の青い点が、迷わず自分の位置を示す。

かつて、時計職人と天文学者が、何十年も争った問いが、
今では、誰も意識すらしない、日常の一部になっています。

そして、今も、既存の権威の外側から現れる発見が、
簡単には認められない構造は、AIの世界にも、繰り返されているのかもしれません。

独学のエンジニアが見つけた工夫が、専門家に認められるまでには、
やはり、時間がかかることが、あるようです。

「今ここ」の正体

ハリソンの時代、経度を知ることは、命を守ることと同じ意味でした。

今、私たちが、当たり前のように見ている青い点の裏に、
どれだけの争いと、どれだけの歳月が、積み重なっているのでしょうか。

そして、次に「当たり前」になる技術も、
今はまだ、誰かが、正当に認められずにいるものなのでしょうか。



#ジョンハリソン #経度法 #クロノメーター #経度の歴史 #大航海時代
#ネヴィルマスケリン #グリニッジ天文台 #GPS #独学の発明家
#AIと人間 #生成AI #人工知能 #テクノロジー
#考察 #読み物 #大人の学び #エッセイ
#ハルとおじいさん #学びの地図 #ManabiMap

いいなと思ったら応援しよう!