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江戸時代の人の一生分を、一日で処理している

何もしていないのに疲れた、という感覚はないでしょうか。
動画を見ていただけなのに、なんかぐったりしている。

これはどういうことでしょうか。


「刺激が少なすぎる」と言われた時代

19世紀初頭、産業革命が進むロンドンで、医師たちがある訴えを多く聞くようになりました。

「退屈すぎて気が滅入る」

当時の上流階級の間では、日常的な刺激の少なさが「神経衰弱」の原因と考えられていました。
新聞は週に数回、手紙が届くのは数日おきの出来事でした。

200年後、私たちは一日に数百のニュース、数千の投稿、何時間もの動画に触れています。

何も変わっていないものと、急速に変わったもの

人間の脳の基本的な構造は、石器時代からほぼ変わっていません。

神経細胞の数、処理速度、集中できる時間の長さ——
これらは10万年前の人間とほぼ同じです。

一方で、外から入ってくる情報の量は、この50年で爆発的に増えました。

テレビの登場、インターネットの普及、スマートフォンの誕生。
技術が10年単位で進化する一方で、脳は変わっていません。

この「ズレ」が何を生むでしょうか。

ニュース産業が学んだこと

1833年、ニューヨークで「サン」という新聞が創刊されました。
1セントという破格の値段で、すべての人が買えた。

「サン」が発見したのは、犯罪・裁判・スキャンダルの記事が最もよく売れるということでした。

これはイエロー・ジャーナリズムへとつながり、
テレビのワイドショーへ、
そして現代のSNSのフィードへとつながっています。

人を引き付けるコンテンツの種類は、200年変わっていません。

なぜなら、脳が変わっていないからです。

ぼーっとする時間が必要な理由

脳には「デフォルトモードネットワーク」と呼ばれる仕組みがあります。

ぼーっとしているとき、シャワーを浴びているとき、散歩しているとき——
何かに集中していない状態のとき、脳の特定の領域が活発になります。

記憶の整理、感情の処理、アイデアの統合——
この状態でしかできない作業が行われます。

「シャワー中にいいアイデアが浮かぶ」というのは、この仕組みからきています。

情報が絶え間なく入ってくると、この時間が消えます。

選択肢が増えると、幸せになるのか

心理学者バリー・シュワルツは「選択のパラドックス」を提唱しました。

スーパーマーケットのジャム売り場で、選択肢が24種類の場合と6種類の場合を比べる実験をしました。

購入したのは、6種類の棚に並んでいたときの方が多かった。

選択肢が多すぎると、選べなくなる。
選んだ後も「別の方がよかったかも」という後悔が増える。

情報の選択も同じかもしれません。


「何もしていないのに疲れる」という感覚は、どこから来ているでしょうか。
「情報を選ぶ」ということは、これまでなかったスキルでしょうか。
「ぼーっとする時間」の意味は、変わってきているでしょうか。


ハルとおじいさん 第9部|学びの地図


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