見出し画像

なぜ「抱っこするな」と説いた学者は、我が子を追い詰めたのか

友人に「抱っこしすぎると自立できない子になるよ」と言われたら、あなたはどうしますか。

もし、それが当時もっとも権威ある科学者の言葉だったとしたら。

信じてしまったかもしれません。

実際に、世界中の親がそれを信じた時代がありました。


もっとも科学的だった子育て論

1920年代のアメリカ。

行動主義心理学を打ち立てたジョン・ワトソンは、一冊の育児書を書きました。

そこにはこうありました。

「子どもを抱きしめてはいけない。キスしてはいけない。膝に座らせてもいけない」

愛情をかけすぎると、子どもは依存的で弱い大人になる。

ワトソンはそう主張しました。

彼はすでに、恐怖が学習によって作られることを示した実験で名を上げていた、当代随一の科学者でした。

その権威ある言葉に、多くの親が従いました。

抱っこは、子どもを甘やかす行為だと信じられていったのです。

科学者自身の家庭に起きたこと

けれど、ワトソン自身の家庭は、幸福とは程遠いものでした。

彼の子どもたちは、大人になってから深く苦しみました。

息子の一人は、生涯にわたって人と心を通わせることに苦労し続けたと語っています。

彼は、感情を持つことを、父親によって訓練で消されたように感じていたといいます。

一族の中には、自ら命を絶った人もいました。

抱きしめることを禁じた理論を作った本人の家庭で、もっとも深い傷が生まれていたのです。

科学的に見えた確信が、現実の子どもの心には、まったく届いていませんでした。

のちの研究は、身体的な触れ合いが、脳の発達に欠かせない刺激であることを示しました。

抱っこは甘やかしではなく、栄養だったのです。

AIの助言も、同じ危うさを持っている

今、育児の悩みをAIに相談する親が増えています。

AIは自信を持って、整理された答えを返してくれます。

その口調は、まるで確立された事実であるかのようです。

けれど、ワトソンの育児論もまた、当時もっとも科学的で自信に満ちた答えでした。

自信に満ちた言い方と、正しさは、必ずしも一致しません。

権威ある声には、無条件に従いたくなる。

その心理は、100年前も今も変わっていないのかもしれません。

それでも、確かめる方法はある

ワトソンの理論を覆したのは、権威ではなく、子どもたちの実際の姿を見続けた、その後の研究者たちでした。

自信のある言い方に、どれだけ根拠が伴っているか。

それを確かめる手間を、私たちは省いていないでしょうか。

今あなたが信じている「正しい子育て」も、いつか誰かに覆される理論の一つかもしれません。

それでも、今この手で触れられる子どもを、抱きしめない理由にはならないはずです。




#ジョンワトソン #行動主義心理学 #抱き癖の迷信 #子育て論の歴史 #オキシトシン
#安全基地 #発達心理学 #スキンシップの科学 #愛着形成 #子育ての常識
#AIと育児相談 #生成AI #人工知能 #権威と信頼
#考察 #読み物 #大人の学び #エッセイ
#ハルとおじいさん #学びの地図 #ManabiMap


いいなと思ったら応援しよう!