見出し画像

【第8回】「マルチパス」それはGPSの永遠のテーマ!?|5分で読めるGPSのしくみ|宇宙一わかりやすく解説

「GPSのしくみ編」の第8回は、約一年ぶりとなった前回からの続きです。前回は、衛星がたくさん見えたほうが理由の一つとして、衛星の配置と位置の精度との関係について解説しましたね。

今回は、もう少し深く踏み込んでGPSの位置ズレを語るうえでは外せない、GPSの永遠のテーマとも言える「マルチパス」という問題についてです。


❔ 衛星の配置さえ良ければいいか?

最初に少し振り返りです。
前回の話は、正確な位置を導き出すには、GPS衛星の配置が大事だってことでしたよね?
だから、使える衛星は多いほうが適度に散らばった配置になるので、衛星の数は多いほうがいいんだよ~って話でした。

じゃあ、信号を受信した衛星の配置さえ良ければオッケーってことでしょうか?
実はそうは言い切れない理由があります。
それが「マルチパス」です。

🤔 マルチパスとは何ぞや?

高いビルが密集した場所でグーグルマップを使ってたら、全然違う場所を示してて道に迷ってしまった。。

こんな経験ってありませんか?
実は、以前の記事でも少し取り上げたことがあるのですが、これってスマホが「偽物の電波」を捕まえてしまっていることが原因です。

「偽物の電波」って言っても、誰かが妨害するために発してる電波のことじゃありません。
ビルに跳ね返って届いた電波、「マルチパス」です。

マルチ(multi):複数の・多くの
パス(path):経路・通り道

つまり複数の経路を通ってたどり着いた電波ってことですね。
以前の記事でも書いていますが、高層ビルの壁や窓っていうのはとてもよく電波を反射するので、跳ね返った電波がそのまま受信機に届くことがよくあるんです。
そしてこれがとても厄介者(やっかいもの)なんです。

😫 マルチパスがどうして厄介者なの?

電波にしてみれば、迂回しながらでもなんとか目的地までたどり着いたんだから、むしろ褒めて欲しいところ、、、
なのに厄介者扱いされちゃうのは、ちょっと可哀そうかもしれませんね。

実際、データを通信するのが目的だったら、跳ね返った電波でも届けばオッケー。
でもGPSでは、これが問題大有りなんです。

なにが問題かっていうと、理由は単純です。
GPSって今までも説明していたように、電波が届くまでの時間から衛星との距離を導き出して、位置を計算します。
ところが何かに反射して届くってことは、電波が届く時間が遅れてしまうわけですから、衛星が実際より遠くに見えてしまうってこと。

マルチパスって何?

衛星が遠く見えるということは、受信機との距離も実際より長いと勘違いしてしまいます、、、
衛星からの距離が間違っていれば、当然「位置」の計算結果もズレてしまいますよね。

だから、GPSで位置ズレを少なくするには、いかにマルチパスによる「偽の電波」を見つけ出すかが大事なんです。

🕵️ マルチパス、どうやって見つける?

さて、マルチパスをどうやって見つけて排除すればいいのでしょうか?
この記事のタイトルにもあるように、マルチパスはGPSにとって「永遠のテーマ」。

マルチパスの影響が少ないGPS受信機 = 性能の良い受信機

ということになります。
なので、受信機やGPSチップのメーカーが独自のアルゴリズムを開発して、いかにマルチパスを排除するかに「しのぎ」を削っている部分です。
もちろんアルゴリズムは企業のノウハウそのもの。一般には公開されていません。

なのでここでは、一般的に知られている方法をいくつか紹介します。

🔎 本物がいれば偽物だってわかる

マルチパスには大きく分けて2種類あります。
本物の信号も一緒に届いている場合と、偽物の信号しか届いていない場合です。

前者の場合は、同じ衛星からの同じ信号が2つ届くわけなのでどっちかは偽物ってことになります。(両方とも偽物の場合もありますが。。)

その場合の判別方法は簡単。マルチパスの信号は必ず反射して迂回して受信機に届くので、先に届いたほうが本物ってわけです。

マルチパス(本物の信号も一緒に届いている場合)

まあ、これは簡単。
難しいのは偽物の信号しか届かない場合なんです。

マルチパス(偽物の信号しか届いていない場合)

🔎 多数決で炙り出す

ここが前回の記事の「衛星はたくさん見えたほうがいい!」という理由にもつながる部分です。

4つの衛星の信号しか捕らえてなくて、そのうち一つがマルチパス信号だったら?
これはもうすべて本物の信号だと信じる他ありません。

じゃあ、もっとたくさんの衛星の信号を捕らえてて、そのうち一つが偽物(つまりマルチパス)だったらどうでしょう?
明らかに特定の衛星を加えて計算した時だけ、全然違う位置になったりします。
「なんかこいつ怪しいな?マルチパスかもしれないから計算では使わないようにしておこう」
って判断ができるようになります。

実際の計算では、前回少し触れたようにまず受信機の仮の位置を決めて、そこからの誤差を出します。
他の衛星は1~3メートルくらいの誤差なのに、一つの衛星だけ20メートルとかだったら、これは怪しい、、、ってなるわけです。

🔎 他にも方法はあるけど・・・

他にもマルチパスを見つけたり排除する方法はいくつかあります。

  • 信号の歪みで見つける

  • 反射した電波を受けにくいアンテナを使う

  • 同じ衛星からの違う周波数バンドの信号と比較する

でも、いずれの方法でも決定打にはなりません。
マルチパスを100パーセント排除することは、現在でもほぼ不可能なんですね。

🏙️ ビルの谷間は最も苦手

そして最初に出てきた、
「高いビルが密集した場所でグーグルマップを使っていたら全然違う場所を示した」
って話です。
そう、GPSが最も苦手とする環境は、高層ビルの密集した谷間と言っていいでしょう。
なぜなら、そこではこんな感じだからです。

  • ビルに隠れてしまう衛星が多く、「偽物の信号しか届かない場合」のマルチパスがたくさんある

  • マルチパスの信号がたくさんありすぎて、多数決では判別できない

  • 空の見える範囲が狭いので、本物の信号を届けてくれる衛星の配置が偏ってしまう

というわけで、なかなかハチャメチャな状態になってしまうわけです。
まさに、高層ビル街はGPSにとっては鬼門なんですね。

📝 まとめ

ということで今回は、「マルチパス」についての解説でした。

GPSが利用されるようになって30年以上経っても、未だにGPS単独では排除できないマルチパスの問題。

前回から引き続きのテーマである「衛星はたくさん見えたほうがいい」ことの根拠として、マルチパスの影響を排除しやすくなるので正しい位置をより確実に導き出せる。
ということにはなりますが、残念ながら完璧とは言えません。

今度、ビル街でグーグルマップを使おうとして全然違う場所を示しても、イライラせずに今回の解説を思い出して、
「あぁ~、ちょっと位置がズレちゃってるけど、辛い環境でスマホも頑張ってくれてるんだなぁ、頑張れ~」
くらいな感じで、温かく見守っていただけると嬉しいです。

では、次回もお楽しみに!!


いいなと思ったら応援しよう!