「自分を大切にする」って、ヨシヨシすることじゃなかった。
「自分を大切にしましょう」
今まで、何度も聞いたことのある言葉です。
でも、正直なところ、私はこの言葉をあまり深く考えたことがありませんでした。
自分を大切にする。
そう言われたら、
「無理しないでね」
「自分に優しくしてね」
「たまには自分にご褒美をあげてね」
そんなイメージ。
自分の頭をよしよしと撫でてあげるような、ふんわりした感覚でした。
もちろん、それも自分を大切にすることの一つなのだと思います。
でも最近、「セルフネグレクト」という言葉を知って、私の中で「自分を大切にする」という言葉の意味が、ガラッと変わりました。
セルフネグレクトというと、私はまず「ゴミ屋敷になってしまった高齢者」などのイメージを持っていました。
生活環境がひどくなっても放置してしまう。
必要なことを自分でできなくなってしまっている。
そんな状態です。
だから、最初は自分とは遠い話だと思っていました。
でも、よく考えてみたら。
「自分を放置する」って、もっと小さなところにもあるんじゃないだろうか。
そんなふうに思ったのです。
たとえば、
疲れているのに休ませない。
嫌だと思っているのに我慢させる。
悲しいのに「こんなことで落ち込んじゃダメ」と黙らせる。
助けてほしいのに、「自分でやらなきゃ」と放っておく。
本当はこうしたいと思っているのに、「そんなこと言ってないで、ちゃんとしなきゃ」と無視する。
私は、こういうことを結構やってきたなと思いました。
むしろ、
「自分を放置するの、得意だったんだな」
と気づいてしまったのです。
私は子育てをしているので、「ネグレクト」という言葉は、どこか身近なものでもあります。
子どもを放置する親にならないように。
ちゃんと食べさせて、眠らせて、話を聞いて、危険から守って。
子どもの様子にはできるだけ気を配りたいと思っています。
それなのに。
自分自身についてはどうだっただろう。
「疲れた」と言っている自分に、
「でも、やらなきゃ」
と言っていなかっただろうか。
「嫌だ」と言っている自分に、
「わがまま言っちゃダメ」
と言っていなかっただろうか。
「助けて」と言っている自分を、
「これくらい自分でやらなきゃ」
と放置していなかっただろうか。
そう考えていたら、ふと、
傷ついている自分の姿が想像できました。
「私はここにいるよ」
「本当はつらいよ」
「もう少し休みたいよ」
「本当は嫌だよ」
そう言っているのに、誰にも聞いてもらえない。
いや、誰にも、ではない。
自分自身に聞いてもらえていなかった。
それに気づいたとき、少し胸が痛くなりました。
「自分を大切にする」という言葉を、私は「自分に優しくすること」くらいにしか考えていなかった。
でも、もっと根っこのところにあるのは、
自分の存在を放置しないことなのかもしれない。
そんなふうに思いました。
自分の声を聞く。
自分の疲れに気づく。
自分の気持ちをなかったことにしない。
自分が助けを求めていることに気づく。
自分が何をしたいのか、考えてみる。
それだけでも、以前の私にとっては十分「自分を大切にする」だったのかもしれません。
そして、ここで一つ大事なことにも気づきました。
自分の声を聞くことと、自分の言う通りにすることは違う。
子どもが「今すぐお菓子を食べたい!」と言ったからといって、いつでも食べさせるわけではありません。
「食べたいんだね」と気持ちは受け止める。
でも、「今はご飯の前だから、あとにしようね」と伝えることもあります。
それと同じで、自分が「今日は何もしたくない」と言ったからといって、すべてを投げ出す必要はない。
「そう思っているんだね」と、まず自分の声を聞く。
そのうえで、
「じゃあ、今日はどこまでならできそう?」
「これは明日に回そうか」
「誰かにお願いできないかな」
と、自分と相談する。
自分を甘やかすことではなく、
自分を置き去りにしないこと。
それが、「自分を大切にする」ということなのかもしれません。
今まで私は、自分を大切にすることを、何か特別なことだと思っていました。
でも、本当はもっと日常の小さなところにある。
「疲れた」と気づいたら、少し休ませる。
「嫌だ」と思ったら、その気持ちをなかったことにしない。
「助けて」と思ったら、誰かに頼ることを考える。
「私はどうしたい?」と、自分に聞いてみる。
そんな小さなことから始められる。
そして、もし今日も自分を後回しにしてしまったとしても、
「また自分を放置しちゃった。ダメだ」
と責めるのではなく、
「あ、置いてきぼりにしてた」
と気づいて、迎えに行けばいい。
自分を大切にすることは、毎日自分をヨシヨシできることではないのかもしれません。
自分の声を無視してしまった日にも、また自分のところへ戻ってくること。
それも、自分を大切にすることなのだと思います。
セルフネグレクトという言葉を知ったことで、私は初めて、
「自分を大切にしよう」
という言葉を、自分の生活の中に落とし込んで考えることができました。
そして今、少しずつ練習しています。
「私は今、どう感じてる?」
「本当はどうしたい?」
「何をしたら、私は少しラクになる?」
すぐに答えが出なくてもいい。
まずは、聞いてあげる。
これまで置いてきぼりにしていた自分に、
「ちゃんと聞くからね」
と伝えるところから始めてみようと思います。

