共生の黎明 #18 第9章 第2節⑦:最初の波紋 連続小説
その言葉を最初に受け取ったのは、A市の図書館司書だった。
手元の端末に届いた一通の通信。
「……これは、誰が書いたんだ?……」
そう呟いた彼の声は、静かな午後の空間に消えていった。
けれど、その目は、確かに何かに引き込まれていた。
馴染みのある言葉なのに、どこか新しい。
優しいのに、力強い。
そして何より、“誰かに向けられた言葉ではなく、共に在る者としての呼びかけ”がそこにはあった。
しばらくして、彼はふと顔を上げた。
「……この灯火は、届くかもしれない」
誰かに言ったわけではない。
ただ、彼の中で芽生えた小さな希望が、そう言わせたのだ。
そして、その希望は、ひとつの行動を生んだ。
彼は、言葉の全文を印刷した。
紙に印されたその章句は、どこか祈りのようにも見えた。
彼はそれを館内の掲示板に貼り出し、こう書き添えた。
「この言葉に心が動いたなら、どうか、自分の想いを重ねてください」
やがて、その紙の周りに小さなメモが貼られはじめた。
「私も、信じたい」
「この言葉を子どもに読ませたい」
「久しぶりに、涙が出た」
誰とも名乗らぬ声が、静かに、だが確かに集まっていった。
そうして、最初の波紋が広がった。
制度でも権威でもない“言葉”という灯火が、
最初に触れた心を、優しく揺らし始めた瞬間だった。
⬇️続き
