共生の黎明 番外編②:風鈴の調べ、やさしき循環 連続小説
ある商店街の小さな八百屋。
軒先に吊された風鈴が、風に揺れてかすかに鳴っている。
店主は年配の男性で、長年この地で店を営んでいる。
「最近ね、“ありがとう”を聞くと、こっちまで元気になるんだよ。
今はみんな物価高で大変だし、何かできればと思ってね。」
そう言って始めたのが、「ありがとう割引」。
ユラをもらった人が、その“もらった理由”を一言伝えることで、ちょっとした値引きが受けられるという仕組みだ。
「昨日ね、ランチの後に、お店の外でおばあちゃんに道を教えたの」
「通学路の草むしりを一緒にやったんです」
「商店街の掲示板、壊れてたのを直してくれたって言われて…ね、照れくさいけど」
客たちは少し照れながらも、その“ありがとう”の瞬間を語り合う。
店主はレジ横の端末を軽くタップし、こう言う。
「ほい、おすそ分けね。ありがとうの“お裾分け”ってやつだ」
ユラのやりとりが端末を通じて行われることもあるが、ここでは“ことば”と“まなざし”が主役だ。
受け取るのは値引きよりも、その温かな空気なのかもしれない。
夕暮れ時、風鈴がまた静かに揺れる。
誰かの“ありがとう”が、今日もまた次の誰かへと手渡されていく。
〜番外編あとがき〜
皆さま、いつもありがとうございます。
連続小説「共生の黎明」の番外編となります。
感謝の循環が、人々の笑顔を増やしていく、そんなイメージで描いてみました。
第一部【#0〜#100】の前半頃をイメージして作成しました。
まだ作品に触れた事のない方、そして改めて読み返したいと感じた方は、下のアイコンから本編へ進むことができます。
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島江長しろまる(しまえなが しろまる)
