共生の黎明 #57 章間②:記憶の風 連続小説
最初に「ユラ」のことを教えてくれたのは、あの小さな子だった。
商店街の片隅、とある店先で、少女は母親の手を握りながら、静かに言った。
「ねえ、ママ。おみせのひとに、ユラ、あげたい」
何かを「してもらう」ことはあっても、何かを「渡したい」と願う、その想いの確かさ。
小さなその手が、何か大切なものを抱えるように、画面をそっと差し出したとき、
その場にいた全員が、少しだけ言葉を失った。
それは仕組みというより、「心の動き」だった。
誰かに“ありがとう”を伝えたいと思うとき、
人はほんの少しだけ、自分の輪郭を越えていく。
あの日のやりとりは、町のどこかに、今も静かに息づいている。
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