母校がなくなって気づいた、“自分のいた場所”の重み
古い母校の写真を見つけて、ChatGPTに絵を描いてもらいました。
できあがったのは、記憶のなかにあった風景そのもの。
でもこの校舎は建て替えられ、もうここにはありません。
◆ 「あれ?ここ、どこ?」母校が消えた風景
先日、久しぶりに卒業した高校の近くを通った。
でも、校門の向こうに見えたのは、知らない建物だった。
あぁ、そうだった。もう何十年も前に、校舎は立て替えられたんだった。
懐かしさよりも、「これは別の学校だわ」という思い。
私の母校はどこに行ったんだろう。
◆自由すぎる高校生活の記憶とシェイクの味
私は制服のない高校に通っていた。 当時にしては珍しく、服装も髪型も髪色も自由。とても居心地がよかった。 昼休みには、友だちと近くのマクドに行って、シェイク片手に歩いて戻ってきた。 本当は禁止だったけど、先生たちも見て見ぬふり。
「自由には、責任が伴うんですよ」って言ってた先生がいたけど、
……シェイクのどこに責任があったんやろ。
◆数学の授業中にバレた“英語の夢”と、先生のひとこと
数学の授業中に、せっせと英語の勉強をしていたら、先生に見つかった。
「英文科に行くんやったな? 数学は大丈夫か?」
「点は足りてます」
すると先生は“えんまちょう”を開き、クラス全員に聞こえる声で私の点数を読み上げた。クラス中がクスクス笑ってる。
「大丈夫やな。ほな、がんばりなさい」
それで英語の内職が公認になった。変な学校。でも、ほんとに楽しかった。
◆ 黒板よりも窓の外ばかり見ていた私
教室の私の席は、窓際が多かった(授業によって変わる)。
その席からは、校門が見えた。 自分がいる本館までの道を眺めるのが好きだった。内職をしていないときは、休み時間も、授業中も、ぼーっと外を見ていた。
「まるちゃんって、ずっと外を見てるよね」
「うん、授業中もずっと外を見ている」とクラスメートに言われた。
(ほんまにあかん。黒板、見なさい。)
◆ 板張りのすきまに押し込んだ青春と、戦争の跡
校舎自体、かなり古い建物だった。
当時ですでに築70年ほど。元女子中学校だから、階段は低め、女子トイレのほうが数が多かった。 掃除は、板張りの隙間に埃を押し込んで終わり。先生に、「頼むからキレイにしてくれ」って言われたけど、どうやってキレイにするのか、よくわからなかった。
戦時中には空襲を受けたらしく、壁に弾丸の跡があった。先生から聞いたとき、「戦争って本当にあったんや」と思った。爪痕を見たのは、生まれて初めてだった。
そして、私たちの教室がある3階は、かつては遺体置き場だったらしい。
「大丈夫、みんな成仏してはるから」と霊感のある私がさらっと言って、みんなを怖がらせてしまった。
「まるちゃんは、この話は禁止!」と怒られた。
◆ 数学の先生との再会と“ひぇー”の声
社会人になって、ホテルのフロントで働いていたときのこと。 チェックインに来た中年の男性が私を見るなり、
「おや、あんた、何してんのん!」と大きな声。
「ひぇー、せんせっ!」素で叫んだ私。もっと大きな声。
あの数学の先生、教員の福利厚生で、人間ドッグ付きの宿泊プランを利用中だった。あの頃ぼーっと外ばかり見てた生徒が、”ちゃんと働いてる姿”を見てもらえて、ちょっとうれしかった。
でも大きな声で「ひぇー」とか、ホテルマンとしてあるまじき対応。あとで先輩にめっちゃ怒られた。(全然、ちゃんと働けてない)
先生は、その人間ドッグで癌が見つかり、現役の50代で亡くなった。
お葬式には、卒業生がたくさん集まった。
「あの校舎に行けば、先生にまた会える気がするのにね」
みんな、そんなことを言ってた。
校舎が変わった今、先生の居場所は、もうない。
……でも、えんまちょう持って成仏してるから、たぶん大丈夫。
◆ 思い出の場所が、少しずつ消えていく
歴史を感じる校舎が、まるごとなくなってしまったのは残念だ。
先生もいない。 昔住んでいた家も、アパートも、もうない。自分が生きた場所が、静かに姿を変えていく。
それが当たり前のことだとわかっていても、取り残されたような気がする。 自分だけが「昔」を背負って歩いているみたいで、悲しくなる。
それでも…、あの時代は、こころの中でずっと輝いている。
昭和・平成・令和と、元号と校舎が変わっても、 自由な空気は、たぶん今もあそこに流れている。
昭和のあのころ、シェイク片手に友達と笑いながら歩いていた道。
令和の今はきっと、在学生がフラペチーノを片手に歩いている。
◆ 夢見がちのあの子に、今の私が言いたいこと
外ばかり見ていたあの教室で、 私はいつか、その校舎から旅立つ自分を空想していたのかもしれない。いま私が昔を懐かしむように、当時の私はきっと未来を夢見ていた。
いまの私が、昔の私に会えたら、きっと言おう。
ーー「勉強しろ」
すかさずブーメラン、
ーー「あんたも痩せろ」
……そうやった。相手も「私自身」や。
下手に叱るな。 いつになったら成仏するんやろ。って、生きてるがな。
あの頃の私も、今の私も、なんやかんや言いながら、生きてる。
黒板は見てなかったけど、たぶん、大事なことは、ちゃんと見てた。
それにしても昔の私、細い。だれ、あんた。
