人に触れられたぬいぐるみは「かわいく見える」—でも、その効果はどれくらい?
2026年2月、PLOS ONEに掲載された研究を読み解く
ぬいぐるみ、人が触っているとかわいく見える 大阪大学が発見https://t.co/bduYNsshXM
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) March 11, 2026
「誰かが大切そうに抱えているぬいぐるみ、なんだかよりかわいく見える気がする……」
そんな感覚、あなたにもありませんか?
それを実験で確かめた論文が、今年2月に発表されました。大阪大学の大橋茜さんと入戸野宏さんによる研究です(Ohashi & Nittono, 2026)。
実験のしくみ
研究チームは、日本人198名・米国人199名、合計約400名を対象にオンライン調査を実施しました。
参加者に見せたのは、こんな4種類の写真です。
丸みがあって赤ちゃんっぽいぬいぐるみ(パンダ・トリケラトプス)
丸みのない円筒形のクッション(黒・グレー)
それぞれについて、人が手で持っている写真と持っていない写真を用意し、「かわいさ」を7段階で評価してもらいました。
結果① 形が「かわいさ」を決める、圧倒的に
まず、誰でも直感的に予想できる結果として——
ぬいぐるみのほうが、クッションよりはるかにかわいく評価された。
その効果量は日本でd = 2.82、米国でd = 2.38。非常に大きな差です。ぬいぐるみそのものの「赤ちゃんっぽさ(ベビースキーマ)」が、かわいさ認知の主役であることが改めて示されました。
結果② 人に触れられると、少しだけかわいく見える
そして今回の研究の核心はここです。
人に手で持たれているぬいぐるみは、持たれていないものより少しかわいく評価された。
ただし、「少し」というのが重要です。
その効果量は——
対象 効果量(d) 日本人のみ 0.11(統計的に有意でなし) 米国人のみ 0.13(統計的に有意) 日米合算(約400名) 有意(分散の約2%を説明)
ベビースキーマの効果(d ≈ 2.8)と比べると、桁が2つ違う。
これは「効果がある」と言えるか、言えないか——じつは、サンプルサイズを増やすと辛うじて検出できる程度の、非常に小さな効果だということです。
「日本では有意でない」ことの意味
特に興味深いのは、日本人データ(約200名)だけで分析すると、触れられている効果が統計的に検出できないという点です。
米国人だけでは検出できる。日米を合算(約400名)すると検出できる。
これは「日本人に効果がない」とは言い切れませんが、少なくとも日本人サンプルではその効果が弱すぎて捉えられなかったことを示しています。
「かわいい」を決めるのは文脈よりも外見
この研究は「かわいさは外見だけで決まるのではなく、関係性や文脈にも影響される」という近年の研究潮流を検証したものです。
結論として、文脈(触れている)の効果は確かに存在するが、ごく小さい。外見の特徴(ベビースキーマ)が圧倒的に支配的である——という、ある意味「バランスのとれた」結果が得られました。
まとめ
人に触れられたぬいぐるみは「かわいい」という評価がわずかに上がる
しかし効果量は非常に小さく(d ≈ 0.1台)、日本人だけのデータでは検出できなかった
かわいさの認知には、ぬいぐるみ自体の見た目(ベビースキーマ)がはるかに大きな役割を果たしている
約400名のデータを合算して初めて有意な効果として現れる程度の小ささ
「誰かが大切そうにしているから、かわいく見える」という感覚は、完全な気のせいではないかもしれない——ただし、その上乗せはとても小さいものです。
参考文献 Ohashi, A., & Nittono, H. (2026). Beyond the baby schema: Objects being touched are perceived to be cute. PLOS ONE, 21(2), e0340903. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0340903
この記事が広く認知されることで、「かわいく見える」という意識が生まれて、
『かわいいね』という人は増えそうでござる(実際の統計や、感覚差が生まれるかもしれない)