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生搾りエッセイ「診察室の風景」

今日の衝撃的な言葉
「先生いくつですか?」
「どう思う?」
「俺と同じぐらい?」
「眼科に行ってくださいね。
見えてないと思うので」
70代の冗談きついわ!! 
もう「破門じゃ!!」
って言ってしまった。
相手はずっと笑っている。

もう1人4−5日食べずにインスリンも打たずに、気持ち悪すぎて
来院した人。もうヘロヘロ。
なんで早く来ないの?
点滴4本して血糖下げて、抗生剤打って、採血結果見たら、かなり、炎症キツイ。
きっと肺炎なってるし。

こういう、「ギリギリ」を繰り返すと、体ってセンサーが働かなくなる。
普通の人がキツイ事も、「全然大丈夫」って体が反応するようになり、
反応した時は「ヤバい」ラインになってからやっと。

「感じない」体になってしまう。
「辛さ」って辛いけど、感じないと人間は生き延びれなくなっていく。
信号機が壊れていると、事故が起こる。
体が「危険」を「危険」と教えてくれるから、逃げられる。
教えてくれる、神経が弱くなると、逃げ遅れる。
一度逃げ遅れると、逃げ遅れるクセが体について、
ドツボに落ちないと気づかない体質になって行く。

糖尿病の業界では、一度糖尿病ケトーシスになったことがある人は
繰り返しやすいと言われる。
意識がなくなるレベルになった人は
さらに危険度が上がる。
一度意識がなくなるまで酒を飲むと、クセになるのに似ている。
自分でブレーキがかけられなくなるのだ。

今日の人も心配。「オレって、そんなに悪いの?」ってナースに聞いたらしいし。

多忙な外来をしながら点滴を4本も入れて、血糖を1時間ごと測って、
インスリンを追加し、口からもポカリを飲ませて、バランスを取るのは
労力がかかる。保険点数には1本点滴しても、4本3時間かけて、声かけしながら、ナースに指示を出しながら、手をかけても同じ。
点滴はお金にならないからやらないクリニックも出てきている。
ルートをとる手技、患者さんへの対応、プロの手技だ。それが500円とかじゃなかったかな?人に針を刺して、物質を入れるってすごいことなのに。

フットマッサージでも10分1000円の時代に。
こっちも、ナースを20分ほど取られて、外来の進みが遅くなる。

なんとかしてやろうという気持ちだけでやる仕事。

体って、全てを覚えている。脳で「言葉」として記憶が残ってなくても
体の細胞は、そのストレス、ストレスに対する自分がした反応、残った傷を忘れない。
忘れずに、次の危機に備えようとしてくれる。
5年生きれば5年分の体の反応。
50年生きればその間の生体反応の記憶。
これは自分だけの体の記憶。

昨日の糖尿病のセミナーでも、糖尿病になる10年ほど前から膵臓は
無理に頑張って、血糖を下げ始め、糖尿病が発症するときには、
走り過ぎて疲れた馬の様に正常の半分の量しかインスリンを作れなくなっている。
「発症」はその瞬間に起こっているように見えて、準備は10年前から。

体は健気に、尻拭いをし続けて、あるとき、限界が来る。

精神的なうつ病も無理して頑張り続けると、もう無理ができなくなって、体が、脳が停滞する。
透析になる10年ほど前に既にover filtration期と言って、腎機能の低下を倍速で自転車を漕いて辻褄を合わせるかのように、無理して、濾過する時期がある。

疲れているとき、無理に笑って頑張る様に。

そのときに気づいて建て直さないと、繕えなくなって、破綻する。
細胞も精神も同じ。

ってことで、明日も彼は抗生剤点滴にくるが、こう言う「ヘロヘロ」
をやる度に、体は傷ついて、鈍感になるよって、一応伝えよう。
理解するかどうかは彼次第。 ボールは彼にある。
なんかの縁だから、良くなればいいなと、思うだけ。


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