【番外編】そちらの世界には戻れない
コロナが始まってから、どれだけの月日が経ったのだろう。
今ではマスクのない生活が、少しずつ当たり前になってきた。
それでも、当時の記憶は色濃く残っている。
ほぼ全員がマスクをしていた、あの異様な光景。
あの時の空気感は、今も頭の片隅にこびりついたままだ。
理髪店が危険だと報道されていた頃、バリカンを買った。
学生時代に坊主だったこともあり、何の抵抗もなくそのまま自分で刈った。
それ以来、ずっと坊主。もう数年が経つ。
たまに聞かれる、「何か悪いことしたの?」という言葉にも、もう慣れた。
会社では、誰も触れてこなくなった。
知人に「髪型、変えないの?」と聞かれるたびに思う。
――気持ち悪くて、伸ばせないんだ。
耳に髪が触れる感覚が、もうどうしてもダメになってしまった。
ぞわっとする。どうしても、無理だと思ってしまう。
ワックスでかっこよく髪をセットしている人を見ると、
ふと、思うことがある。
「あぁ、自分はもう、そちらの世界には戻れないのかもしれないな」
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── まっしゅ
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