2001年の手記③
真冬の夜の宿直
先日からの大雪で豚舎は埋もれ
雪かきをしないと
豚舎間の行き来ができなくなっていた
吹きだまりの雪は
自分の身長を越えていた
「今日の宿直、雪は降らんだろうけど、夜回り気をつけろよ。懐中電灯の電池切れかかっているから、長く歩くな」
「乾電池も買ってくれんのか😅」
宿直の夜回りは2時間おき
夜10時まで、豚舎、浄化槽に異常がないか確認する
真っ暗な山奥
ひとりの泊まり
気温マイナス5℃、腰から上の雪を手でかき分けて、見回りを続ける
一番離れた施設を見回り終えて
事務所に帰ろうとした時
天候が急変する
地鳴りのような音がひびき
真っ暗な山奥から、白い巨大な壁が
轟音と共に迫って来る
白い壁に飲み込まれた瞬間
ドンという爆発音と共に視界が真っ白に覆われる
雪が降っている訳ではなかった
強風で、積雪と氷の固まりが、猛スピードで横殴りに走っていた
ツナギ1枚の体に寒気が突き刺さる
寒いというよりは痛い
木綿のツナギは凍りついて、パキパキと音を立てている
両手で、顔を覆うが、袖口と前髪から、ツララができている
目が開けられない
たかが数分の出来事だが
命が終わる危険を感じる
どこでもいいから、建物に入らないと
強風で自分の足跡が埋まっていた
位置関係がわからない
懐中電灯は電池切れで役に立たない
「上着と乾電池くらい買ってくれ😂」
雪が自分の胸元まで覆っていた
歩かないと、止まっていたら埋もれる
だいたいの方向感覚で、雪をかき分け
吹雪と積雪の中をモグラのように進む
木綿の軍手は氷の固まりになり
手首から先の感覚がない
100メートルも進めば、豚舎に着くはずだ
痛みと寒さで体力を奪われ限界に来ていた
死にたくないな。
死んでたまるか。
死んだらつまんねーだろ。
いろいろあった人生だが、生きることにどん欲だったらしい
あきらめの悪さと、極度の意地っぱり
動け!足掻け!動け!足掻け!動け!足掻け!
無意識に、うごけ、あがけ、が、頭の中をループしている
進み続けた
足のつま先が、どこかの段差にあたり、手が壁らしきものに当たった
どこかの建物にたどり着いた
壁つたいに掘り進み、ドアを見つける
ドアは凍りつき開かなかった
氷ダンゴと化した手で、ドアを掘る
その間も風雪は止まず、掘りかえしたドアがどんどん埋まる
凍りついた引き戸の戸袋を蹴り壊す
わずかにできたすき間に
ボールペンを差し込みこじ開ける
バキバキと氷が砕け、引き戸が開く
室内に倒れこんだ
しばらく動けなかった
どこかの室内、真っ暗だった
呼吸が整いはじめ、氷ついた髪が溶け
真っ暗な部屋を壁づたいに進む
ドアノブを見つけドアを開ける
機械室だった
計器のランプが点灯し、
数匹のネズミがうごめいていた
機械室づたいに豚舎に入り、
豚の熱で暖をとった
助かった
人よりズレた感覚、ひねくれたあきらめの悪さ
この性格で、この時は助かった。
教訓 バカは死ななきゃ治らない
死にかけても、治らないバカは
もはや救いようがない😂
