経理として成長するとは|「数字を作る」から「数字を使う」へ
以前、月次決算が締まったあとに、利益が大きく落ちていた月があった。
理由を確認すると、
「売上が落ちたからです」
という説明が返ってきた。
間違いではない。
ただ、さらに数字を見ていくと、
実際には売上未達だけではなく、粗利率も悪化していた。
もし「売上が落ちたこと」だけを原因として捉えれば、
営業を強化しよう。
案件を増やそう。
という判断になるかもしれない。
でも、本当の問題が値引きや原価上昇なら、必要な打ち手はまったく違う。
同じ「利益が落ちた」という結果でも、
原因が違えば、経営判断も変わる。
だから、数字を正しく作れることと、
数字から会社で何が起きているのかを理解できることは別だ。
前回は、経理として成長するとは、
「作業を任される人」から「会社の数字を任される人」になることだと書いた。
今回はその先、
作った数字を、どう経営に使える状態へ変えていくのか
を整理したい。
比較は、分析ではない
月次決算を締めたら、まず数字を比較する。
前月比。
前年比。
予算比。
例えば売上が1億円だったとしても、その数字だけでは良いのか悪いのか分からない。
前年8,000万円なら伸びている。
でも予算1億2,000万円なら未達だ。
ただし、比較しただけでは、まだ分析ではない。
比較は、
「どこに違和感があるのか」
を見つけるための入口だ。
本当に重要なのは、
その次に、
「なぜ?」を掘ること。
会計数字を、事業の出来事に戻す
例えば、
売上が予算より2,000万円少なかった。
そこで、
「売上未達です」
で終わらせない。
なぜ2,000万円足りなかったのか。
案件数が少なかったのか。
受注率が落ちたのか。
平均単価が下がったのか。
納品が翌月へずれただけなのか。
会社によっては、
売上を、
商談数 × 受注率 × 平均単価
まで分解できる。
人件費なら、
人数 × 一人あたりコスト
に分けられる。
粗利率が落ちたなら、
値引きなのか。
原価上昇なのか。
商品構成が変わったのか。
こうやって、
会計科目を、その会社を動かしているKPIまで分解していく。
ここまで来ると、数字は単なる結果ではなくなる。
売上や利益という会計数字を、
営業活動。
価格。
人員。
顧客。
商品。
現場。
実際に会社で起きた出来事へ戻していく。
「数字を使える」とは、
数字の変化を事業で起きた出来事まで戻し、その先に何が起きるのかまで考えられること
だと思っている。
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PLだけでは、会社全体は見えない
見る範囲も広げる必要がある。
売上が伸びている。
利益も出ている。
それでも、現預金が減っていることはある。
売掛金が増えているのかもしれない。
在庫が積み上がっているのかもしれない。
設備投資をしているのかもしれない。
借入金を返済しているのかもしれない。
ざっくり言えば、
PLは一定期間の成果を見る。
BSは、その時点の会社の状態を見る。
キャッシュは、実際のお金の動きを見る。
この3つをつなげることで、
会社の状態が立体的に見えてくる。
PLだけを見て、
「利益が出ているから大丈夫」
とは判断できない。
過去の数字から、未来を考える
経理が作る数字は、基本的には過去だ。
でも、経営者が決めるのは未来だ。
だから、
過去を説明して終わるだけでは、経営には届かない。
例えば、
今月、粗利率が3ポイント下がった。
この状態が来月も続いたらどうなるのか。
5人採用した。
来月以降、人件費はいくら増えるのか。
売掛金の回収が30日遅れた。
現預金にはどれくらい影響するのか。
大型投資をする。
その後、資金はどこまで持つのか。
考えることはシンプルだ。
「この数字が続いたら、次に何が起きるのか」
を見る。これが、
予実管理やForecast、資金繰りといった仕事につながっていく。
大切なのは言葉を覚えることではない。
過去の数字から未来を見る癖をつけることだ。
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経理は、答えを出す仕事ではない
例えば、
「営業利益は500万円でした」
という報告がある。
数字としては正しい。
でも、これだけでは経営は判断できない。
「予算より300万円未達です」
まで分かる。さらに、
「主因は粗利率の3ポイント低下で、そのうち2ポイントはA事業の値引きによるものです」
まで分かる。そして、
「この状態が続けば、四半期では約900万円の未達になる可能性があります」
まで見える。
ここまで来ると、数字は報告ではなく、経営判断の材料になる。
経理が、
「値上げするべきです」
「この事業をやめるべきです」
と答えを決める必要はない。
経理は答えを出す仕事ではない。
経営が答えを出せる状態をつくる仕事だ。
何が起きたのか。
なぜ起きたのか。
このままだとどうなるのか。
そこまで数字で見える状態をつくる。
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どうやって身につけるのか
いきなり高度な分析から始める必要はない。
月次決算が締まったら、差異の大きい数字を3つ選ぶ。
そして、それぞれについて、
何が起きたのか。
なぜ起きたのか。
このまま続いたらどうなるのか。
を考える。
経理だけで理由が分からなければ、数字の背景を知っている現場に確認する。
数字を見て、会社の中で何が起きているのかを確かめる。
これを毎月繰り返す。それだけでも、数字の見え方は大きく変わっていく。
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経理として成長するとは
前回は、経理として成長するとは、
「何を任せられるか」が広がること
だと書いた。その次は、
「数字から何まで読み取れるか」が広がること。
私は、経理として成長するとは、
数字を通して理解できる会社の範囲を広げていくことだと思っている。
数字を記録するだけなら、経理は過去をまとめる仕事で終わる。
でも、
数字から会社で起きていることを読み取り、その先を考え、経営が判断できる状態をつくれるようになれば、経理は、経営を支える仕事になる。
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