ポケットメモ#99 夜店に迷い込む
■今日のポケットメモ
お盆 祭り 金魚すくい
◆◆◆
夏は、ほぼ一ヶ月間。
母方のおばあちゃんの家に行く。
我が家の毎年の行事だ。
新幹線から特急電車に乗り継ぎ。
更に田舎の列車に乗る。
母は。
年に一度、学生時代の仲良しに会ったり。
姉妹の家に行ったりする。
子どもだった私たちも、母にくっついて行く。
結構、忙しい。
そんな恒例行事の1つに、花火大会があった。
家のそばにはない、大きな川。
その川岸から見る花火は。
夜空に咲いた大きな花が、今にも降り注ぎそうな大きさ。
いや、吸い込まれそうな、と言った方がいいかもしれない。
ため息が出るほど、綺麗なのだ。
◆◆◆
その年は。
花火大会をやる河原の向こう岸に。
夜店が並んでいるのが見えた。
「今まで無かったよね。
お姉ちゃん、ボク行ってみたい」
弟が目を輝かせて、私に言う。
花火が終わり。
母は、友達とばったり会ったと言って。
楽しそうに話し込んでいる。
「ちょっと、向こうのお店を見てくるね」
弟と走り出す。
花火が終わって。
帰る人でごった返している、橋。
はぐれたら大変だ。
弟の手をぎゅっと握る。
大人達の間を、すり抜け。
夜店を目指す。
早く行かないと、終わっちゃう。
近くに見えたのに、結構遠い。
弟と二人、走る。
はぁはぁ
息が切れる頃。
やっと夜店の並んでいる場所の入り口についた。
◆◆◆
綿菓子に、あんず飴。
射的に、金魚すくい。
スーパーボールが、グルグルと。
小さなプールに回っている。
うわぁ。
まだまだ人が大勢いる。
よかった。
弟が。
金魚すくいをやりたそうにして、見入っていた。
お小遣いを持ってくればよかった。
ポケットに手を突っ込むが、そこには何も入っていない。
ふと。
夜店のお兄さんを見ると。
ひょっとこのお面をつけていた。
夜店のお兄さんが、お面をつけているなんて。
珍しい。
家の近くの秋祭りの夜店では。
お店の人はニコニコしながら。
お金を受け取ったり、商品をお客さんに渡したりする。
隣の子を見ると。
やっぱりお面。
後ろを振り返ると。
お面をつけた。
おとな、おとな、おとな。
◆◆◆
頭の中で。
警報音が鳴った。
ここにいたら、マズイ。
弟の手を引いて、立ち上がる。
くるっと向きを変えて、走り出す。
夜店からは。
「ゆっくりしていきなよぉ」
声が聞こえる。
パタパタ。
足音が追いかけてくる。
「大丈夫だ。そのまま橋を渡ってしまえ」
聞き慣れた、おじいさんの声がした。
◆◆◆
「やだ。どこに行っていたの?」
母が向こうからやってきた。
弟が母にドンと抱きつく。
母の顔を見たら、なんだか気が抜けて。
その場にしゃがみ込んだ。
「さあ、帰ろう」
母の右手に弟が、左手は私が手を繋ぎ。
恐る恐る振り返る。
「あの辺は沼地でね。蛍が沢山飛んでいるよ」
母はのんびりした声で、教えてくれた。
◆◆◆
「明日はお墓参りに行こうね。
おじいちゃんを迎えに行こう」
おばあちゃんは、布団を敷きながら。
私たちに言った。
明日から。
お盆が始まる。
<Fin.>
参加させていただきました。
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