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アルゴリズムという名の郵便局

34秒の動画にボコボコにされた話 〜推しにラブレターを届けたいだけなのに〜
私は別に「インフルエンサーになりたい!」とか「何万いいねを取って承認欲求を満たしたい!」と思っているわけではない。

ただ、マイケミ(My Chemical Romance)のアカウントを伸ばしたいだけなのだ。

なぜなら、推しが好きだから。

もっと言えば、推しにある一言を届けたいから。

「フランク、お前の公式サイトのリンク死んでるぞ!!!!!」

と。

フランクの公式サイトを見ていたら、日本語のショップへのリンクが完全に死んでいて、なぜか別の怪しげなブログサイトに飛ばされることに気づいた。

「いや、これ誰か本人に教えたほうがよくない?」

そう思い立ち、数ヶ月前に本人へ直接DMも送った。しかし、読まれた気配はゼロ。Instagramのフィルターが強すぎるのか、そもそも見られていないのか。

私の渾身のメッセージは、本人に届く前にInstagramの門番に止められている可能性がある。

そこで私は考えた。

「じゃあアカウントを育てて、界隈で多少認知されるようになれば、いつか本人や関係者の目に入る可能性も上がるのでは?」

こうして私は、動画制作という未知の世界へ足を踏み入れたのである。

勘違いの始まり「4,000いいね」


さっそく動画を投稿し始めた私に、悲劇(?)が起こる。
なんと2本目に投稿した動画が、いきなり4,000いいねを超えてしまったのだ。

ほぼ編集していない。画角を変えただけ。
なのにバズった。

「……あれ?」

「動画って、普通にやれば伸びるのでは?」

私は完全に勘違いした。初心者が一番陥ってはいけない罠に、自ら喜んで飛び込んでしまったのだ。

10倍の労力をかけた渾身の動画、爆死す


「じゃあ今度は、せっかくだからちゃんと編集しよう!」
すっかり調子に乗った私は、前回の10倍以上の労力をかけて動画制作に挑んだ。

MCRの昔の写真を冒頭に入れました。

「フランク欠席だったの!😭」というオタク特有の熱い情報も盛り込みました。

文字も入れました。

動画編集なんてほぼやったことのない人間が、めちゃくちゃ可愛く仕上げた(つもりだった)。

長さは34秒。ストーリー仕立ての完璧な構成。

「これはいけるやろ!」

自信満々で投稿した。
結果。

😐

開始直後からの、凄まじい離脱。

泣かず飛ばずとはまさにこのこと。

え? 待って。なんで?????

平成の「動画」と現代の「ショート」は別の生き物


ここで私は初めて、現在のショート動画が、私の知っている「動画」とは全く別の生き物であることに気づいた。
私はこれまで文章を大量に書いてきた人間なので、「34秒の動画」と聞いたとき、正直こう思っていた。
34秒? 短くない?」
曲だったらイントロが終わるかどうかくらいだし、YouTubeなら「短い動画だな」と思う長さである。
私が慣れ親しんできた平成〜2000年代の「動画を見る」という行為は、基本的に「再生ボタンを押して、その作品を見る」ものだった。
MVならイントロがあり、Aメロがあり、サビがあり、最後まで見る。「なんかこの曲かっこいいな」と、30秒くらいは待ってみる余地があった。テレビだって、YouTubeだって、「この動画を見る」と決めてから見る。
だから私は、動画にはある程度「見てもらえる時間」が初めから存在するものだと思い込んでいた。

ところが今は違う。
ショート動画は「動画を見に来た人に見せる」ものではない。

無限スクロールしている人の指を、一瞬だけ止めるゲームだった。

2秒。
3秒。
「なんか違うな」
👉 スワイプ。

終わり。

怖すぎる。
「いや、もうちょっと見たら面白くなるんですけど!!」と叫んでも無駄なのだ。現代の視聴者には、「もうちょっと見てもらうため」の理由を、開始1〜2秒でこっちが提示しなければならないらしい。

努力量 ≠ 見たい動画


「冒頭にMCRの写真を置いたんだから、止まるだろ!」と私は思っていた。
でも初見の人からすれば、それは単なる「海外のバンドマンが店の前にいる写真」でしかない。「……何の店?」「この後何が起きるの?」と思われたままスワイプされる。

私が作ったのは、
MCRの映像 → 大阪の映像 → 店内 → キャベツを食べる私

という、最後まで見て初めて文脈が繋がる構造だった。ファンなら「おお!」となるが、知らない人には「何の動画???」で終わる。

現代のショート動画でやるべきだったのは、

0.0秒 「MCR came here 20 years ago.
1.5秒 「So I went there. 🇯🇵」

これを最初に出すことだったのかも??

つまり、「入口はめちゃくちゃ大衆向けに分かりやすく翻訳して、中身で自分の好きなオタクなものをやる」。これが正解だったのだ。

そして一番残酷な事実は、動画では制作コストと伸びが全く比例しないということ。私が「ここ頑張ったんです!!」と込めた愛は、視聴者が続きを見る理由にはならないのである。

これ、実際にやってみると笑う。

今までは「なんとなくこの動画、弱いのかな?」くらいの、ふわっとした感覚だった。

でも投稿して数字を見ると、

「はい、お前ここでめっちゃ離脱されてます」

と、ものすごく残酷な形で突きつけられる。

感覚じゃない。

数字である。

「この編集、頑張ったんです!!」
「この写真も入れたんです!!」
「MCR好きだから、ここ絶対面白いと思ったんです!!」

知らん。

視聴者からしたら、

「で、続きを見る理由は?」

なのである。

なんというか、「お前、おもんないねん」

ってデータに言われてるみたいでぴえん🥺

郵便局が強すぎる

動画ってこんなに戦略ゲームだったのか。
私は今、実地で殴られながら初めて「動画を作るってこういうことか……」と学んでいる。
私はインフルエンサーになりたいわけじゃない。バズりたいわけでもない。
ただ、推しにラブレターを届けたいだけなのだ。

なのに、弱小アカウントの私が送った手紙は、推しに届く前にアルゴリズムという名の巨大な郵便局に握り潰されて捨てられている。
どうしたら推しに届くんですか???

私は今日も、郵便局の圧倒的なパワーの前で泣いている。

世界中に大量にファンがいる人の1対多だとこればかりはしょうがないさ

私は今、
「推しに認知されたい♡」
というより、

「あなたの公式サイトの日本語リンク、死んでて変なブログに飛びますよ!!」

ただその一言を伝えるためだけに、慣れない動画編集に手を出し、開始2秒で視聴者にスワイプされ、現代のショート動画文化にボコボコにされているのだ。

でも、ふと冷静になって気づいてしまった。
彼のInstagramのフォロワー数は「110万人(1.1M)」だ。

数字だけ見ると麻痺してくるが、これは東京ドームの収容人数(約5万5千人)で換算すると、実に東京ドーム20回分レベルの超満員である。
想像してみてほしい。
超満員の東京ドームが20個、目の前に並んでいる。
そこにいる110万人全員が、ただ1人のタトゥーだらけのギタリストの一挙手一投足を見つめているのだ。

ドーム20個分の群衆が、昼夜問わず四方八方から「アイ・ラブ・ユー!」「大好き!」「ブラジルに来て!」などと絶叫しながら、ステージ上の彼に向かって大量の手紙を投げまくっている狂気の空間。

その怒号のような愛の嵐の中で、私は一番後ろの立ち見席から、小さなメガホンを握りしめてこう叫んでいるのだ。
「すいませーーん!! 公式サイトの日本語ショップのリンクが死んでて、謎のブログに飛びますよーーー!!!」

……いや、届くわけないやん。

そもそも、自分の声が届くレベルの空間ではなかったのだ。

本人が私のメッセージを無視しているわけではない。ドーム20個分の愛の絶叫にかき消されて、私の極めて事務的な「リンク切れのお知らせ」など、物理的に彼の耳に届くはずがないのである。

そんな血を吐くような思いでSNSのMCR界隈を彷徨っていた時のことだ。

とんでもなくヤバいファンたちの投稿を目撃してしまった。
「私たちMCRファンと彼らの関係って、完全にパラソーシャル(Parasocial)だよね! わかってるわかってる、開き直っていこう! 最高!」みたいなことを言ってる人がいた。

……は? パラソーシャル?
なんだその小洒落た横文字は。
嫌な予感がして、私はGoogleで「パラソーシャル関係」と検索した。
そして、出てきた意味を見て戦慄した。

【パラソーシャル関係】
有名人やキャラクターに対し、ファンが「個人的な知り合いである」「友人である」と思い込む、一方的で錯覚的な人間関係のこと。過度になると相手を支配しようとしたり、現実の距離感を見失う危険性がある。

ヤバすぎるだろ。

いや、断じて違うやろ!!!!!!
一緒にすな!!!!!!

東京ドーム20個分の群衆の中で「今、絶対に私と目が合った!」と本気で信じ込めるその図太い神経には、呆れを通り越して感心すら覚える。

私はフランクと「お友達になりたい」わけでも、「個人的な繋がりがある」と錯覚しているわけでもない。彼が私の存在を知らなくても全く構わない。

私がやっていることは、愛ゆえの「無償のシステム保守点検」である。 

「推しの公式ショップへの導線が死んでいて、謎のスパムサイトに吸い込まれているから早く直した方がいいですよ」という、極めて実務的なバグ報告を上げたいだけなのだ。

(まあ、その単なるバグ報告のために、わざわざMCRの昔の写真を引っ張り出し、動画編集に10倍の時間をかけ、「フランク欠席だったの!」という無駄に熱いオタク情報を盛り込んでアルゴリズムに散っている時点で、私も大概ヤバいことは否定しない。)

だが、あの「推しと私たちは実質ズッ友!」みたいなパラソーシャルな幻想を抱いて開き直っている奴らと、同じ箱に入れられるのだけは絶対に御免だ。

私から見れば、彼らが抱く「推しと繋がっている」という脳内ファンタジーよりも、「推しの利益や公式サイトのブランドイメージがリンク切れによって物理的に損なわれている」という現実のバグの方がよっぽど大問題なのだ。

だからこそ、私は今日も「届かない!!」と泣きながら動画を作り続けている。
私の目的は、推しの認知ではない。リンクの修正だ。

どうか、私のこの極めて真っ当で事務的な(?)ラブレターが、パラソーシャルな愛の重さに紛れることなく、無事にフランクのスパムフォルダをすり抜けてくれますように。

追伸。

肺炎で安静にしていてやることがなく、朝からぼんやりしていたところ、

ちなみに肺炎の人間が朝起きて何をしていたかというと、

Vitamin Fっていう、ひたすら看病されるほんわか夢小説をジェミニと書いてました。

こいつ肺炎辛すぎるのか知らんけど、推しに妄想で看病させてるぞwww

いや、あの、今回は普通に死にかけてるので、そんな普段みたいなドギツいやつは一切ございません。

健全です。健全だからね???

……と、なぜか普段不健全なものを書いている人間が、必死に弁明しております。
追記
夜中にうなされながら書きました!🍓
なんか本人のトラウマが滲み出てる気がしますがお楽しみください🍓
というわけで、完成したのでこちらに置いておきます👇
Vitamin F

⚠️ RPF(Real Person Fiction)です。完全なフィクションとしてお楽しみください。

そしてスマホポチポチして起きて、薬の飲むスケジュール的に起きないと不味いなと、ご飯食べたところ、南米のめちゃくちゃ面白いマイケミ大好きフォロワーちゃんから突然、

「これバズってるよ!」

と、日本のテレビでMCRが出ている映像が送られてきた。

数字を見る。

「えっ、これ今作ったほうがよくない???」

鉄は熱いうちに打て!!!!!!

ということで、先月たまたま大阪に行って撮っていた素材を突然かき集め、動画編集の知識ほぼゼロのまま、朝から爆速で動画制作を開始。

「この素材使える!」
「これも入れよう!」
「MCRの写真もある!」
「フランク欠席だったの!!」
「文字入れたら分かりやすいやろ!」

と、肺炎患者とは思えない勢いで素材をぶち込み、

「よし!可愛くできた!いけるやろ!」

と投稿。

結果。

動画の意味がよく分からないまま案の定爆死。

手探りで動画を作っている人間、見事にショート動画の洗礼を受けました。

朝からバズを見つけて即行動。

素材を掻き集めて爆速制作。

そして数字を見て撃沈。

ADHD丸出しです。

肺炎の人間が安静にしている休日、朝からやっていたことがこれです。

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