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「好き」の引力は予測不能。GUCCIの蛇とNetflixの聖地が教えてくれた、退屈な正解より、癖の強い毒を。

「みんなと同じような、無難で綺麗なものを好きにならなきゃいけないのかな」

そんなふうに、周囲の空気に必死に合わせようと悩んでいた時期が私にもあった。

数年前、周りの同世代の女の子たちの間では、アルハンブラやココクラッシュ、トリニティみたいな、華奢で上品なジュエリーが大流行していた。同期と遊びに行けば、彼女たちはイヴ・サンローランの綺麗めにまとまったハンドバッグを真剣に選んでいる。

たしかに綺麗だし、お上品だし、誰からも文句を言われない安全な大人の正解だ。私も「へー、可愛いね」と横で相槌を打ちながら、でも内心では(シンプルで上品にまとまりすぎて、全然心が動かないな…)と冷めた自分がいた。

周りはみんな綺麗めだし、私もそっちに合わせるべきなのかなと悩んだけれど、私が本当に心惹かれて、バイト代やなけなしのお金を必死に貯めて買っていたのは、まったく違うものだった。

当時インスタフォローしてたZOCの藍染ちゃんが持っていて、どうしても欲しくてたまらなかったGUCCIのさくらんぼの財布。

そしてかてぃの退廃的な死んだ顔とその華奢な体の中心に無造作に掛かっているGUCCIの鞄。


そこからGUCCIのデザインに無性に惹かれて、ごついベルトモチーフの指輪や、真っ赤な小さいハートのワンポイント、ちょっと毒々しいテイストのブレスレットを集め始めた。

このシリーズ今更もっと欲しくなって後悔してます。
ドクロと蛇モチーフのアクセも欲しすぎる😭

万人受けするお姉さんの正解といえる上品さとは程遠い、ちょっとアクが強くて、でもどうしようもなくロマンチックなデザインたち。そういえば、当時のアクセサリーが入っていたGUCCIの箱には、ちょっと毒っぽいピンクのヘビが描かれていたっけ。

誤解のないように言っておくと、当時のアレッサンドロ・ミケーレが手掛けるGUCCIは、若者向けのマーケティングが本当に神がかっていた。

決して、生まれつきのお金持ちしか買えないような雲の上の存在なんかじゃない。普通の学生でも、日々のバイト代を必死に貯めて、少しだけ無理をして背伸びをすればギリギリ手が届く、絶妙な「リアルな憧れ」として私たちの目の前に提示されていたのだ。

周りの子たちが、親から買ってもらったり、堅実にお金を貯めたりして、誰もが「正解」と認める上品なアルハンブラやココクラッシュを選んでいく中。
私は、自分のなけなしのバイト代のすべてを、万人受けはしないけれど最高にロマンチックで毒々しい、あのヘビの箱に入ったアクセサリーたちに突っ込んでいた。
今思えば、完全に金銭感覚のバグった、やばい買い物の仕方だったと思う。
でも、周りのお上品な正解にどうしても迎合できず、自分はイマイチ浮いていると悩みながらも、結局自分が本能で惹かれるちょっと癖の強いゴツいものに、文字通り自分の稼いだお金と熱量をすべて賭け続けた後に…

それから数年が経った、現在。
マイケミ(My Chemical Romance)の沼にどっぷり沈み、日々彼らのドロドロしたバンドの歌詞の深読みに狂っている私。

特に推しているFrank Iero について調べていた時、彼が愛用している香水が判明した。
(2025年の4月末ごろ本人が地元NJのイベントで答えてる映像にて。)

GUCCIの『The Voice of the Snake(ザ・ヴォイス・オブ・ザ・スネーク)』。

イタリアで見てきた

直訳すれば「蛇の声」。この名前に込められた意味に、勘のいい人は気がついたかもしれない。
ここで言う「蛇」とは、決してただの爬虫類のことではない。旧約聖書に登場する、あの美しきエデンの園で、人間に「禁断の果実」を食べるよう唆したあの蛇だ。

「これを食べれば、神と同じように知恵を得られる」。

その甘く滑らかな囁きは、平穏で無知な楽園から永遠に追放されると分かっていても、どうしても手を伸ばさずにはいられない抗えない誘惑の象徴。つまりこの香水は、ただ良い匂いがするという次元を超えた、自ら望んで楽園を捨て、破滅へと堕ちていくような背徳のロマンを、そのまま黒い小瓶に閉じ込めたような代物なのだ。

ただでさえ、そんな業の深いコンセプチュアルな香水をフランクが使っているという事実だけで、限界オタクとしてはときめきで息が止まりそうになったんだけど……

ここで、私の脳内に雷のような衝撃が走った。過去の記憶と、私がこれまで狂うほど読み解いてきた彼らの物語が、強烈にフラッシュバックしたのだ。

ジェラルドが紡ぎ出す、あの痛切な歌詞の世界。そこには常に、拭いきれない罪の意識と、それでも止められない禁断の愛への渇望が、血を流すように描かれている(と筆者は考察しています)。

決して神には祝福されない、同性へのどうしようもない感情。許されないと分かっていながら、息が詰まるような逢瀬に溺れ、その泥沼から抜け出せない狂おしいほどの葛藤。

私の一記事2万字に及ぶものもある考察の根底には、いつもそのどうしようもなく惹かれてしまう美しき罪の匂いが立ち込めていた。

そして、その相手を誘惑し、狂わせ、罪の意識の底なし沼へと引きずり込んだ張本人が、あろうことか「エデンの園で禁断の罪を唆す蛇」の香りをその身に纏っているという事実。そうか。楽園から連れ出した蛇は彼本人だったのかもしれない。

何ということだろう。私が心血を注いで書き綴ってきた、彼らのドロドロとした共依存と背徳の物語が、まさか香水にまでその危険な罪の香りを漂わせていたなんて。

悲痛な音楽と、現実の彼が選んだ香りが、寸分の狂いもなく完全に重なり合う。楽園を失ってでも手に入れたい甘い誘惑。

あまりの圧倒的な解釈一致の暴力に、息をとめ、そしてふと自分が好き好んで集めていたGUCCIのコレクションを思い出す。

……ヘビ?

気になって調べてみたら、なんとこの香水を作ったのは、私が数年前に買い漁ったさくらんぼの財布やごつい指輪を手掛けた当時の敏腕デザイナー、アレッサンドロ・ミケーレだったのだ。

周囲の「お上品な正解」にどうしても迎合できず、自分はイマイチ浮いていると悩みながらも、結局自分が本能で惹かれるちょっと癖の強いゴツいものを選び続けた結果。

数年越しに、大好きな推しの好みと完全一致していたというオチ。いやもう、見事な伏線回収すぎて一人で大爆笑してしまった。

もし今、周りの人間関係や、みんなが好きでいるものに馴染めなくて、自分だけが浮いているような気がして息苦しい思いをしている人がいるなら。

無理に自分の好みを殺してまで、退屈な正解に合わせる必要なんて全くない。誰かに理解されなくても、自分が心から惹かれる癖の強い好きを信じて握りしめていれば、いつか必ず、同じ匂いを放つ最高に狂った大好きなものの元へ導いてくれる。

推しとミケーレが、数年越しの答え合わせで私にそう教えてくれた気がする。

自分の感性を信じて戦った結果、見事に推し(フランク)と好みが一致していたGUCCIの奇跡。

でも実は、それとは全く逆のパターンでも、私は推しに関するとんでもない伏線回収を経験している。

数年前、友人を訪ねてロサンゼルスへ旅行に行った時のこと。

その友人は、オタク気質でありながら現地の陽気な社交性も持ち合わせている、パワフルな子だった。私は彼女とその家族に言われるがまま、車に乗せられてとりあえずハリウッド観光地を引き回される完全な受け身の旅行者になっていた日があった。

ハリウッドの方からの帰り道。たまたまNetflixの本社の前を車で通りかかった時のことだ。


ちなみにNetflix& Chill?は有名な爆笑慣用句だ。
その名前のアイスが売っててスーパーで爆笑した。
友達と買って食べた。おいしい!
あとベンジェリ日本撤退して寂しい。ベンジェリ購買で買ってレポート食べた思い出が😭

「せっかくだから見ていきなよ!記念に写真撮ってきなよ!!」

ネトフリ本社前にて

友人のお母さんに猛烈に勧められ、私は(正直そこまで興味ないんだけどな……)と思いながらも、空気を読んで車を降りた。そして、いかにも「観光客です!」という顔をして、Netflix本社の前でとりあえず記念写真を撮った。

観光地ドライブ

それから数年後。

現在の私は、マイケミに狂い、フロントマンであるジェラルド・ウェイの底知れない才能に平伏している。彼が描いたコミック『アンブレラ・アカデミー』が大ヒットし、Netflixで実写ドラマ化されたのは有名な話だ。

……ん?ちょっと待って。

Netflixでドラマ化?ということは、実写化の会見とか、プロデューサーとの打ち合わせとかで、ジェラルド・ウェイ本人も絶対にあのNetflix本社ビルに出入りしているよね?

そう気づいた瞬間、変な声が出た。

当時、あんなに「興味ないけどとりあえず空気読んで撮っておくか」と愛想笑いでシャッターを切ったあの場所が。3年の時を経て、大好きな推しが踏みしめた超・聖地へと変貌を遂げていたのだ。

意図せぬ聖地巡礼。自分の無自覚な伏線回収のスケールの大きさに、一人で腹を抱えて笑ってしまった。

自分の「好き」を頑なに貫いて集めたGUCCIが、フランクの愛用香水に繋がっていた奇跡。
周りの空気に合わせて、ただ言われるがままに流されて撮ったNetflixの写真が、ジェラルドの聖地に繋がっていた奇跡。

どうやら、私たちが本当に心から惹かれる大好きなものの引力というのは、想像以上に強いらしい。

自分の意志で戦っている時も。

周りに合わせるのに疲れて、ただただ愛想笑いで日々をやり過ごしているだけの時も。

自分では何の意味もないと思っている無駄な時間の中に、未来の自分が狂喜乱舞するような最高の伏線が、ひっそりと撒かれていることがあるのかもしれない。

高校時代、スティーブ・ジョブズの有名なスピーチにある「点と点を繋ぐ(Connecting the dots)」という言葉を知って、すごく素敵な考え方だなと思っていた。でも当時の私には、「点をつなぐ」という感覚がいまいちピンと来ていなかった。
けれど最近、少しずつその実感が湧いてきている。

自分の狂気的な趣味や、ちょっと引かれそうなほどの深い考察を、恐る恐る周囲の友人と共有するようになってから、そこから思いがけない新しいディープな情報や笑える面白い話が聴けることもある。

なんなら行きつけの音楽好き美容師さんに私のブログで書く前の、マイケミ共依存考察をどうしても話したくなって話した。お兄さんは最近マイケミのライブを見たらジェラルドが謎の女装をしていて、困惑した。あんな人だったっけ???って言われたから、元々歌詞深読みしたら反乱はあって、私は最初から多分あの格好したかったと思いますよ。なんならメンバーとの距離感おかしすぎて絶対あれはなんかある。って私が言葉を選びながら引かれなさそうに意図的に人物も話も適度にぼかしながら具体例とともに伝えたら、マジwwって言われてなんか怪しいけど、なんかそうなのかもしれないって真面目に話を聞いてくれた。なんならお兄さんの方からえ、誰と????と言われたからギターの人です。と楽器だけ伝えてぼかして複数の選択肢があるように煙に巻いておいた(めちゃくちゃ笑顔で答えたので検索したら絶対察されてる気がする)。
その上で、他のバンドの面白い謎エピソードをお兄さんは面白おかしく話してくれた。髪を染めてるのにもはや私は音楽怪しいネタを話しに美容院に行っているのかもしれない。

また少し前の話になるが、クリスチャンの友人に誘われて、クリスマスパーティーに参加してきた。

煌びやかで神聖な空気の中、私は少しだけ場違いな居心地の悪さを感じながらも、その温かい空間を楽しんでいた。でも、笑顔でみんなで持ち寄った食事とそのお母さんのお手製神がかった美味しい料理を頬張りながら、私の頭の片隅にはずっと、少しおかしな罪悪感が少しだけこびりついていた。

「目の前で微笑んでいる彼女たちからしたら、私が普段熱狂しているBMTHやマイケミの、あのダークで背徳的な音楽なんて、もはやカルト宗教か何かだと思われるんだろうな……」

神聖なパーティーの裏で、一人密かに禁断の果実(ヘビの香水)の匂いを隠し持っているような、あの可笑しくて少し肩身の狭い感覚。
でも、今はそれでいいのだと思う。

自分の意志で抗って掴み取った「毒」の点(GUCCI)も。

周りに合わせるのに疲れて、ただ流されるままに打っただけの無意味な点(Netflix)も。

そして、場違いな空間で感じた、異端者としてのひそやかな罪悪感という点も。

誰かに否定されたような気がして落ち込む夜があっても、自分が心から惹かれる癖の強い好きを信じて握りしめていれば。

いつか必ず、そのバラバラに見える無数の点が繋がり、同じ匂いを放つ最高に狂った大好きな場所へあなたを連れて行ってくれる。

推しとミケーレ、そして無自覚に通り過ぎたNetflixの聖地が、数年越しの答え合わせでついさっき、私にそう教えてくれたのだ。

振り返ればすべてが、私という人間の輪郭を作り、大好きなものへと繋がる星座のようになっているのかもしれない。


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