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「コレステロールが高いのも、代謝のせいですか?」

⚠️ぜんぶ代謝のせい #3|前回:#2 血圧と糖尿病


はじめに

「先生、健康診断でコレステロールが引っかかったんですけど……それも糖尿病と関係あるんですか?」

#1では膝の痛み。#2では血圧。
そして今回は脂質。

ここまで読んでくださっている方は、もう薄々気づいているかもしれません。
「また代謝のせいなんでしょ?」
——はい、正解です。

ただし今回は、少しだけ話がやっかいです。
なぜなら、健康診断の「コレステロール」の数値だけ見ていると、本当の問題を見逃すことがあるからです。

📌 このシリーズ「ぜんぶ代謝のせい」は、一見すると糖尿病と関係なさそうなテーマを、代謝のつながりから読み解く場所です。


糖尿病の人に多い脂質異常は、ちょっと特殊

結論:糖尿病に伴う脂質異常は「中性脂肪が高く、HDLが低い」のが特徴。LDLが正常でも安心できません。

脂質異常症というと、多くの方が「LDLコレステロール(悪玉)が高い」をイメージすると思います。
健康診断でも、いちばん目立つのはLDLの数値です。

ところが、糖尿病に伴う脂質異常は、少し違うパターンをとることが多い。

特徴的なのは、この3つのセットです:

  • 中性脂肪(TG)が高い

  • HDLコレステロール(善玉)が低い

  • LDLの数値は「一見普通」だけど、質が変わっている

この3つ目が曲者です。あとで詳しく説明しますが、LDLの「数」ではなく「質」の問題が隠れている。
健診の結果で「LDLは基準値内ですね」と言われても、代謝の専門医が別のところを気にしている理由がここにあります。


なぜ重なる? インスリン抵抗性が脂質を狂わせる

結論:インスリン抵抗性は肝臓の脂肪生産を暴走させ、善玉を減らし、悪玉の「質」を凶悪にする。3段階の連鎖です。

また出てきました、インスリン抵抗性。
#2では血圧を上げていたこの厄介者が、今度は脂質のバランスを崩します。

連鎖① 肝臓が中性脂肪を作りすぎる

インスリンが効きにくい状態では、肝臓が「もっとエネルギーを蓄えなきゃ」と勘違いして、中性脂肪の生産を増やします。
本来ならインスリンが「もう十分だよ」とブレーキをかけるのですが、抵抗性があるとブレーキが効かない。
結果、血液中の中性脂肪が上がります。

連鎖② HDL(善玉)が早く壊される

中性脂肪が多い環境では、HDLの中身が中性脂肪と入れ替わってしまいます。
中性脂肪を抱え込んだHDLは不安定になり、通常より早く分解される。

HDLは血管のお掃除係。
このお掃除係が減ると、血管にたまったコレステロールの回収が追いつかなくなります。

連鎖③ LDLが「small dense LDL」に変わる

ここがいちばん見えにくい、でも重要なポイントです。

中性脂肪が多い環境では、LDLの粒の大きさが変わります。
普通サイズのLDLが、小さくて密度の高い「small dense LDL(スモールデンスLDL)」に変化するのです。

このsmall dense LDLは、通常のLDLに比べて:

  • 血管壁に入り込みやすい(小さいから隙間を通る)

  • 酸化されやすい(酸化LDLは動脈硬化の主犯)

  • 肝臓に回収されにくい(長く血中に留まる)

つまり、LDLの数値が同じ「120mg/dL」でも、中身の質がまったく違うことがある。
健診の数値だけでは見えない「隠れたリスク」です。


「LDLが正常だから大丈夫」の落とし穴

結論:一般的な健診ではLDLの「数」しか見ません。糖尿病型脂質異常の本体は「中性脂肪・HDL・LDLの質」。LDLは表の顔、中性脂肪とHDLは裏の顔です。

外来でよくあるやりとりがあります。

「先生、LDLは120で基準値内でした。脂質は大丈夫ですよね?」

このとき、私が見ているのはLDLよりも中性脂肪とHDLの数値です。

中性脂肪が200以上、HDLが40未満——こういうパターンがあったとき、LDLが基準値内でも「脂質は大丈夫」とは言えません。
なぜなら、先ほど説明したsmall dense LDLが増えている可能性が高いからです。

#2で血圧を「代謝の警報ランプ」と呼びました。
脂質でいえば、**LDLは「表の顔」、中性脂肪とHDLは「裏の顔」**です。

表の顔だけ見て安心してしまうと、裏で進んでいる動脈硬化を見逃す。
糖尿病の外来で脂質の話をされたとき、LDL以外の数値にも触れられるのはそういう理由です。


じゃあ何ができる?

結論:中性脂肪は食事と運動への反応がいちばん大きい。インスリン抵抗性を改善すれば、#1の膝、#2の血圧、そして脂質──全部が動きます。

ここまで3回にわたって「インスリン抵抗性」が繰り返し登場しています。
膝を傷め、血圧を上げ、脂質を狂わせる。

ということは、裏を返せば、インスリン抵抗性を改善すれば、これらは同時に良い方向に動くということです。

特に中性脂肪は、生活習慣への反応がいちばん大きい脂質です。

  • 精製糖質と過剰なアルコールを減らすと、中性脂肪は比較的速やかに下がります

  • 有酸素運動(ウォーキングなど)は中性脂肪を下げ、HDLを上げる効果が確認されています

  • 体重を5%減らすだけで、中性脂肪・HDL・血糖・血圧がセットで改善するデータがあります

薬が必要な場合ももちろんあります。でも、まず知っておいてほしいのは、あなたの生活の小さな変化が、ドミノの向きを変える力を持っているということ。

#1で膝、#2で血圧、#3で脂質。
3回かけて、少しずつ地図が見えてきたでしょうか。


今日のまとめ

  • 糖尿病に伴う脂質異常は「中性脂肪↑・HDL↓・LDLの質の変化」という独特のパターン

  • 犯人はまたしてもインスリン抵抗性。肝臓の中性脂肪生産を暴走させ、善玉を壊し、悪玉を凶悪化させる

  • LDLが基準値内でも安心できない。中性脂肪とHDLが「裏の顔」

  • 中性脂肪は食事と運動への反応が大きい。小さな生活変化がドミノの向きを変える

  • #1の膝、#2の血圧、#3の脂質──全部の根っこはインスリン抵抗性


👣 今日の一歩
次の血液検査の結果を見るとき、LDLだけでなく中性脂肪とHDLにも注目してみてください。
3つセットで見ると、自分の代謝の「裏の顔」が見えてきます。


前回: ⚠️ぜんぶ代謝のせい #2|血圧と糖尿病
次回: ⚠️ぜんぶ代謝のせい #4(テーマ準備中)

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⚕️ この記事は代謝内科の臨床経験をもとに一般向けに書いたものであり、個別の診断・治療を目的としたものではありません。脂質や糖尿病の管理についてはかかりつけ医にご相談ください。


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