#映画感想文432『これからの私たち All Shall Be Well』(2024)
映画『これからの私たち All Shall Be Well(原題:従今以後)』(2024)を映画館で観てきた。
監督・脚本はレイ・ヨン、出演はパトラ・アウ、マギー・リー。
2024年製作、93分、香港映画。
パット(マギー・リー)とアンジー(パトラ・アウ)は、香港で暮らす六十代のレズビアンカップル。シニア向けのファッションビジネスを立ち上げようと、わくわくしながら計画を立てていた。パットの実兄の家族と中秋節を祝った夜に、パットが急死してしまう。
パットとアンジーは単なるパートナーで法的なつながりは何も持っていない。ゆえにパットが海への散骨を望んでいたとパートナーだったアンジーが主張しても、親族の意向で墓に納骨されてしまう。二人でずっと暮らしてきた部屋は、実兄に相続されることになり、法律を盾にアンジーは家を追い出されてしまう。アンジーのレズビアン仲間が助けてくれようとするが、遺言書もなく、法的な関係もないため、対処のしようがないことがわかってくる。
生活を奪われていくアンジーは被害者に見えるかもしれないが、パットの実兄側の親族も、経済的な苦しみを抱え、疲弊していた。夫婦は食堂ビジネスに失敗し、定年退職の年齢を過ぎても、非正規の仕事を続けていた。夫(パットの実兄)は駐車場の案内人、妻はホテルの清掃の仕事をしており、決して暮らし向きは楽ではない。アンジーはパットの経済力に支えられていたため、それほど大きな苦労してこなかったのたではないかと、夫婦がアンジーを妬ましく思っていたことが徐々に明らかになっていく。(経済的に成功していた妹に対する複雑な感情もあったはず)夫婦の息子は社会人になっても稼ぎが少なく部屋を借りることもできない。パット(妹)名義のマンションは、親族にとって喉から手が出るほど、ほしいものだった。
結婚とは国がお墨付きを与えるものであり、ある制度の利用が認められたり、税金の控除が受けられたりする。同性婚を求める人たちが多いのは、当たり前の権利がないことで、実際に困るからなのだろう。(よしながふみ先生の『きのう何食べた?』でも、シロさんとケンジが養子縁組をするかどうかの話し合いをする回があった)
本作を観て、長年連れ添った六十代のカップルが何の対策も講じていなかったことに、ちょっと違和感を覚えたのも事実。日々に流されてしまうことはもちろんあると思うが、財産分与がないとか、相続ができないとか、緊急的な入院の際、病院で立ち会うこともできないというのは、常識の範囲だと思う。だから、異性愛カップルは結婚するのである。家制度を疎ましく思っていたとしても、法的なメリットがデメリットを上回るため、実利を優先して婚姻を選んでいる人は多いはず。ただ、人生において思わぬ穴に落ちることは誰にでもあり、その穴をつぶさに描いている作品だとも言える。
アンジーがハイキングに行ったときのパットとの会話のやりとりを思い出すラストシーンは、喪失が見事に描かれており、とても美しかった。
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