点滴地獄〜血管が欠陥?
即日入院が決まった瞬間から、点滴が始まった。
外来専門の看護婦さんは、丁寧に私の右腕と左腕を見比べて、左腕を選択。それから腕の表・裏をくまなくチェックし、表に狙いを定めたようだ。
「アルコールでかぶれたりはしませんか?」
「はい、大丈夫です」
目をそらして、針が刺さるのを待っているのに、看護婦さんはその後も左表の血管をアルコール綿で拭きながら、あちこちなぞっている。ためらっているように思えた。
(正直、スゲー怖いんですけど…)
意を決したのか、同じ場所を何度かアルコール綿で拭いたのち、針が刺さった。
「ホッ…」看護婦さんの安堵のため息が漏れる。
(やっぱり怖え~~)
そこから48時間以上の通し点滴が始まった。
ソルデム3A輸液パックのお代わりが延々続く。
そして3日後に急に点滴管から液が漏れだした。
仕方なくナースコールで看護婦さんにお知らせ。どうやら器具が破損したらしい。
(寝相が悪かったのかしら?)
看護婦さんがとても困惑気味だった。
あとでわかったのだが、これが最後の輸液パックだったから。
このまま漏れを無視して続けてしまうか?新たに刺しなおすのか?悩んでいたようだ。方々へ電話して、結局、刺しなおしの指示が出たらしい。
婦長さんっぽい年配の女性が刺しなおしに来た。
右腕、左腕を確認して、左腕を選択。勢いよくアルコール綿で拭き、
いざブスッ。
命中しなかったらしく?皮膚下で血管を探して針がうねうね動く。
(あの痛さは、経験した事がある人しかわからんだろうな~~)
結局左腕を諦めた婦長さんもどきは、右腕側に移動。
「今度は一番細い針にしました」
(そんなの血管触った時に分からんのかい?
言い訳いらんから、次で決めてくれよ!)
同じく血管を指でなぞって、狙いを定めアルコール綿で拭き、
いざブスッ。
またしても取り逃がしたのが分かった。皮膚下でうねうね。いい加減怒りたくなるのを我慢していると神経に触って、
「痛い!」声と共に足が上がってしまった。
私が暴れたので、婦長さんもどきは早々に退散した。
「もっと腕の立つ医者を連れてきます」と言い残して。
(あんたが、選抜エースじゃないんかい?)
次にやって来たのは若手の医師2人組。
毎回の儀式、右腕、左腕の血管をなぞって、左腕を選択。
「正直言ってこれはかなり難しいですね」
(そんな言い訳はいらん。一発で決めてくれよ!)
若い医師にためらいは無かった。刺すスピードと強さが婦長もどきとは違う。
いざブスッ。
(これはいったのか?)
若い医師は刺した針に注射器をセットして、中身の液体が体内へ流れていくか?(ちゃんと針が血管を通ったか)確認していた。
「ダメだ。流れていかない…」
その言葉を聞いたら、もう絶望感しかない。ただただ涙が溢れる。ベッドに横たわりながら、人体実験を受けているか?プチ拷問を受けている気になる。
状況を見かねた隣のベッドの主から、声がかかった。
「あの、すみません、私も針が通らないんです。で、毎回超音波でやってもらってるんですよ。それを使ってあげられませんか?」
(超音波なんてあるんだ?だったら最初からそれ使ってよ!!)
あとで調べたのだが、「エコー下穿刺(かせんし)」なる物があるらしい。超音波診断装置を使用して、血管に針を通す技術だそうで。
メリットは下穿刺の成功率が上がるので、無駄に血管を傷つける事が無い。
デメリットは機械の準備や操作に時間がかかり、画像を見ながら慎重に刺すので、痛みを感じ易いそう。
若い医者はそんな助言に聞く耳も持たず、左腕に狙いを定めている。
あとで知ったのだが、この若い医師は研修医で、一度穿刺に失敗し、おめおめと指導医自身を呼びに行くことは、彼の中では選択肢には無かったようだ。
(若さゆえの過ちってやつですか?
患者ファーストにしないと良い医者になれませんよ、先生!!)
「もしこれでうまくいかなかったら、もっと腕の立つ先生を連れてきます」
(もうそのセリフは聞き飽きた。あんたのチャンスは1回で良かろう?もうチェンジしてくれよ~~)
いざブスッ。
同じように注射器をセットして押し込む。
「あ、流れた!俺はここを絶対に離さないから、早く保定して!」
絶望の涙から安堵の涙に変わった。
それにしても点滴で4度も針を刺されると思わなかった。
ちなみに採血も左右、お替り2度体験中。ここに入院中にさらなる記録更新なるのか?
