地位と名誉と財産を持ったタヌキ
地位があった。
名誉があった。
財産もあった。
だから自分は、立派な人生を歩いてきたのだと思っていた。
胸を張り、人を見下し、
誰かを差別し、
自分より下を見つけては、安心した。
それを強さだと思っていた。
それを勝利だと思っていた。
それを人生の成功だと信じていた。
けれど、人生の総仕上げに差しかかった時、
ふと気づいてしまった。
これは、人生ではなかったのではないか。
人として歩いていたつもりだった。
しかし実際には、タヌキの道を歩いていた。
化かし、化かされ、
飾り、誇り、
中身のない威厳をまといながら、
同じようなタヌキたちに連れられて、
ここまで来てしまった。
戻ろうとしても、道がない。
謝ろうとしても、言葉がない。
やり直そうとしても、
これまで踏みつけてきたものが、足元に積もっている。
地位も、名誉も、財産も、
最後には人間の代わりにはならない。
人を見下して得た高さは、
本当の高さではない。
誰かを傷つけて得た誇りは、
ただの皮だった。
人生とは、上に立つことではなく、
人として立つことだった。
そのことに気づいた時、
タヌキは初めて、自分の影を見た。
大きな屋敷の中で、
小さく震える一匹の影を。
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