Stay with me 硝子の中年時代
おじさんが透明になってきている気がする。
昔のおじさんはもっと"濃かった"んだ。
酒。タバコ。脂。武勇伝。
今のおじさんは違う。
肌。
やたら求める透明感。
「40代男性向けスキンケア」
化粧水を“入れ込む”という概念。
ぷるんとしたつや肌。
毛穴が消え、テカリが抑えられ、モチモチ保湿。
眉毛。
なんか整い始める。
昔の眉毛は“自然災害”、最近のはちゃんと輪郭がある。
床屋で「整えますか?」と聞かれ「軽くお願いします」とか言ってる。はあ?
服。
白・黒・グレー・ベージュになる。
ロゴが消える。
柄も消える。
季節感すら曖昧になる。
ケア。
汗拭きシート。
ボディミスト。
乳酸菌。
森林浴。
脱毛、ネイルケア。はあ?
おじさんの無臭化。臭いが漂わない。
どんどん透けていく。エロくもないのに。
会話までシースルー。
「最近どう?」
「まあまあかな」
「忙しい?」
「ぼちぼち」
スケルトン。
世間の監視、ルッキズム、コンプライアンス。
怒鳴らない。説教しない。自慢しない。
昔のおじさんにあった“俺を見ろ”が、完全に抜け落ちている。
サウナで湯気とおじさんの区別がつかない。
誰にも嫌われない代わりに、誰の記憶にも残らない。
きっとこんなことを電車内で書いている私も、誰からも見られていない。
存在を認識されていない。
よく目が合うと思っていた女の子は、私を通して広告を見ていたようだ。つらい。
たぶん最終形態のおじさんは、肉体すら失う。
駅のホームにて「最近ちゃんと寝れてる?」みたいな優しい言葉だけを残し、朝日に反射して消える。
骨格だけがうっすら残る。
でもその骨も、保湿されている。
将来的には「最近の50代、肌きれいですよね」でなく、
「最近の50代、可視化むずいですよね」の時代が来ると思う。
いや、もう来ている。
ぼくの心はひび割れたビー玉さ。
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