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吾輩は猫である_MK-Ⅱ.とある就職氷河期世代の非正規雇用は孤独死を迎えて猫世界転生するも、マスターはパパ活女子大生で、今夜も月に代わっておしおきよ?⑩

 吾輩=佐藤健一は浮いていた。

 確かに、高校は学ランだったが、
 ハルの高校はブレザーだ。
 他校の生徒のようだ。

 「君はハルの何なの?」
 気になるアイツが尋ねた。

 「吾輩は猫である。
 サーバントは世を忍ぶ仮の姿に過ぎない」

 沈黙が流れた。
 彼女の顔が赤くなり、
 周りのヒソヒソ声と嘲笑が広がった。

Schola post scholam
放課後の教室

 「一体どの辺りが猫なんだ?」
 気になるアイツが尋ねた。
 
 「吾輩はハルの猫だ」
 吾輩は堂々答えた。
 
 「いや、どう見ても人間の姿をしているぞ?」
 「この姿は前世の姿だ。
 反英雄として死んだ姿だ」
 
 なぜか若返っているが、
 佐藤健一は働かず餓死した。
 
 「頭大丈夫か?」
 「もう止めて!」
 ハルが叫んだ。

aedificium scholae
校舎

 「ここは放課後の教室よ」
 ハルが震えていた。
 
 「私の思い出を壊さないで」
 吾輩は沈黙した。
 
 吾輩はサーバントだ。
 マスターの言う事を聞かないといけない。
 
 そうしないとおまんま食い上げだ。
 飼い猫になっても何も変わらない。
 
 吾輩はそっと教室を後にした。
 非正規雇用は死なず、ただ去り行くのみ。

andron
廊下

 吾輩は教室の外に出ると、
 廊下からハルの様子を見守った。

 「ごめんね。取り乱しちゃって」
 彼女が謝ると、
 気になるアイツと女子の取り巻きが微笑んだ。

 「いや、気にしていないよ。
 校外の部外者だろう?」
 吾輩の耳がピクッと動いた。

 「ううん。親戚みたいな人よ」
 彼女は吾輩を否定しなかった。

vespera
夕暮れ

 「親戚?いとこ?」
 気になるアイツがそう言うと
 「うん、いとこいとこ」
 とハルは答えた。
 
 「ふ~ん。そうなんだ」
 急に興味が失せたのか、
 その場から立ち去ろうとする。
 
 「待って、やり直したいの!」
 彼女は下を向いて叫んだ。
 
 こんな声が出るんだ。
 吾輩は臍を嚙んだ。
 
 「え?やり直すって何を?」

crepusculum
夕闇

 気になるアイツが尋ねると、
 ハルは沈黙した。

 この世界線では
 彼女は高校生に戻っている。

 完全なメタ発言だ。
 意味不明だろう。

 「ま、いいや。
 でも何か雰囲気違うよね」
 そう言われて彼女は動揺した。

 「大人っぽいし、何か怪しい感じがする」
 彼女の外見が変わっても、
 中身まで変わった訳じゃない。

occasus solis
夕焼け

 「ゴメン。
 何でもないの。気にしないで」
 ハルは気になるアイツに背を向けた。

 「分かった。じゃあ、また明日」
 「うん、また明日」
 彼女は放課後の教室を後にした。

 「いいのか?」
 吾輩は尋ねた。

 「人生やり直すんだったら
 全部忘れないとダメだよね。
 こんなのフェアじゃない」
 「フェアじゃない?」

Stella Vespertina
宵の明星

 「だって今の私で
 昔の私をやるなんてチートじゃない」
 
 「確かに」
 吾輩は頷いた。
 
 「だから人生をやり直すなら、
 記憶を消去しないとダメなのよ」
 
 ハルは生まれ変わりの事を言っているのか?
 だとしたら、猫でありながら、
 人の前世の記憶を持つ吾輩は一体何なのか?
 「まさか、まだ終わっていない?」

iuvenis
若人

 吾輩は全てが分からなくなった。
 一体何のために猫に転生したのか?

 だが不意に、
 荘厳なる仏の言葉がフラッシュ・バックした。
 「善行を為せ」

 そのための記憶か?
 ズルをするためではない?

 吾輩はハルを見た。
 「記憶を持ってパラレルワールドに来る事は意味がある」
 「どういう事?」
 「善行を為せ」

precatio
祈り

 吾輩は説明した。
 「よく前世の記憶を持ったまま異世界無双する話があるが、
 アレは善行ではない。ただのチートだ」
 「……そうだね」
 ハルも頷いた。
 「今の私で前の私の世界を台無しにしているか、
 私自身を無意味な存在にする」
 「異世界知識は不要だ」
 「その心は?」
 「人生修行を台無しにする」

Extra fenestram
窓の外

 とうとう10編100話を超えてしまった。
 こんな落書き小説でも続くものだ。

 壁の落書きなので、思うがままに進んでいる。
 あまり連続性がないかもしれない。
 
 繋がっているようで、繋がっていない。
 ま、現実だってそんなものだろう。
 
 どこまで現実で、どこから夢なのか。
 時々、深い夢から覚めると、そう思う時がある。
 
 朝、何だか凄く遠い世界から帰って来た気がする時がある。
 戻ってきたというべきだが、よく分からない。
 
 腹の底というか、下腹部の奥に何か感じる事がある。
 死の世界というか、元の世界、夢の世界の残滓だ。
 
 朝、謎の距離感だけ漂わせて、そのうち忘れる。
 真昼の光を浴びているうちに忘れる。
 
 夢、眠りは、意識のモードをチェンジさせる。
 昼間寝落ちしても、その一瞬で未来や過去を見る事がある。
 
 ビジョンだ。あるいは他の人の記憶、思い、残留思念だ。
 何かそんなものを読み取る時がある。
 
 バスの座席だったり、トイレに座った時だったり、
 人と会って話している途中で急に寝落ちして、見る。

 それは誰かの気がかりな事だったり、無念だったりする。
 とにかく、眠い。ビジョンと眠りは関係がある。

 あとあまり霊的になると、すぐ変なものが寄ってくる。
 世界は悪霊だらけなので、しょっちゅうぶつかっている。
 
 道端でよく眼を付けられて、攻撃される。
 仕事で一緒に歩いている人が驚く程、脈略が無い。
 憑依されている人が突然、話し掛けてくるのだ。
 
 下手すると暴れ出すので、逃げるに限る。
 光をぶつけてやる事もできるけど、やらない。
 
 ま、見える世界は人さまざまだ。
 同じものは見ていない。違うものを見ている。
 
 世界自体が、大きなビジョンなのかも知れない。
 
                             ⑪に続く?
 
 

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