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【エッセイ】武尊選手の引退に際して【武尊ありがとう】


洗脳から始まる格闘技観戦

2017年のこと。当時好きだった先輩に、夕方から日付を越すまで武尊選手の試合映像を観させられ続けるという、洗脳とでも呼ぶべき体験をした。それまで相撲くらいしか知らなかった自分の、格闘技との出会いだった。
影響されて自ら視聴した初めての試合が、あのビクトーサラビア戦だ。

衝撃だった。

先輩が7時間に渡って熱く語った格闘家が、金的を食らってゲボを吐いている。

しかも嘔吐の末、なんと試合に復帰するのだ。

当時、武尊選手は新生K-1の看板をほとんど独りで背負っているようなもので、「試合をやり遂げなければ」という重圧と悲壮感に満ちていた。
そんな武尊選手が好きだった。
「相手の攻撃を喰らいながら、攻めて攻めて倒して勝ち、観客を沸かせる」という彼が彼自身に課している責務はあまりに過酷で、だからこそ独特の魅力があった。
本人が苦しくて仕方なかったことは重々承知している。が、格闘技との出会いとしてはこの上なく幸運だった。
この先どんな素晴らしい格闘家に出会っても、2022年以前の武尊選手に対するものと同種の感情は湧かないだろう。なぜなら、選手をそんな苦境に立たせてはならないからだ。

あれから9年

武尊選手を知って9年が経つ。
格闘技を教えてくれた例の先輩はマルチに行ったので縁を切った。今は生死も分からない。
配偶者はもともと格闘技に興味があったそうで、昔好きだった人から影響を受けた趣味だと知りながら観始めてくれた。今では配偶者の方がハマってしまい、ONE SAMURAIを一緒に観に行ってくれた。
自分も結婚したが、武尊選手も結婚した。
彼の引退はキックボクシングの一時代の区切りを象徴する出来事だが、自分個人としても、人生の一区切りを勝手に感じている。

ネクスト武尊は現れるのか

他の選手を武尊選手と同じ物差しで比べること自体が失礼かもしれないが、自分は「現れるだろう」という楽観的な見方をしている。
なぜなら、武尊選手に憧れる多くの人がいるからだ。
彼がロールモデルである限り、近い地点に到達できる人は必ず現れるだろう。活躍の場がキックボクシングなのか、MMAなのか、それとも格闘技ですらないのかはさておき。

武尊、ありがとう

武尊選手、現役生活おつかれさまでした!!!!
たくさんの素晴らしい試合をありがとう!!!!
これからの毎日が、周りからの期待に応えるためのものではなく、自身の人生になることを願っています。

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