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ふわラボ通信② しましまコラッツ

数の足あとを縞模様にしてみる

前回、コラッツ予想を「数の足あと採集」として眺めてみた。

偶数なら、2で割る。
奇数なら、3倍して1を足す。
それを繰り返す。

ルールは驚くほど簡単なのに、どんな正の整数から始めても本当に1へたどり着くのかは、まだ一般には証明されていない。

つまり、入口は小さな公園のすべり台くらい親切なのに、奥へ進むと急に底なし沼がある。

前回は、その沼に片足を入れた。

数のルートをたどる。
帰宅時間を調べる。
最高高度を記録する。
偶数税と奇数税を足してみる。

すると、ただの数字だったものが、急にプロフィールを持ち始めた。

すぐ帰る数。
少し寄り道する数。
帰ると言ったまま山脈を越える数。
そして、人間のほうが帰ってこられなくなりそうな数。

危なかった。

Madowakuはコラッツ予想の通りに、ちゃんと1の家へ帰ってきた。

たぶん。

さて、今回はその続きである。

前回の終わりに、妙なものが見えかけた。

コラッツ予想の足あとを、偶数と奇数で見分けたらどうなるだろう。

偶数を0。
奇数を1。

そう置き換えてみる。

すると、数の旅は、一本の縞模様になる。

偶数は0、奇数は1

たとえば、7から始める。

7のルートはこうだった。

7 → 22 → 11 → 34 → 17 → 52 → 26 → 13 → 40 → 20 → 10 → 5 → 16 → 8 → 4 → 2 → 1

この中で、奇数は1。
偶数は0。

そう置き換えると、

7:
10101001000100001

になる。

数の旅が、急に暗号っぽい顔をした。

これは何だろう。

計算結果なのに、少しだけ模様に見える。
数字の足あとを、0と1で写し取ったようなものだ。

ここでは、これを「ビット紋」と呼んでみる。

7のビット紋は、

10101001000100001

奇数で始まり、偶数をはさみながら、最後は1で終わる。

もちろん、これはコラッツ予想の証明ではない。

ただの置き換えである。
でも、置き換えただけなのに、急に見え方が変わる。

数字の列だったものが、模様になる。
模様になると、比べたくなる。
比べ始めると、分類したくなる。

このあたりから、また沼がぬるっと足首をつかんでくる。

7、14、28を並べてみる

まずは、わかりやすい数を並べてみる。

7のビット紋は、さっきの通り。

7:
10101001000100001

では、14はどうだろう。

14は偶数なので、まず2で割られて7になる。

14 → 7 → 22 → 11 → 34 → …

つまり、14のルートは、最初に14がひとつ増えただけで、そこから先は7と同じになる。

だからビット紋は、

14:
010101001000100001

になる。

7のビット紋の前に、0がひとつ増えた形だ。

では、28はどうか。

28 → 14 → 7 → 22 → 11 → …

なので、28のビット紋は、

28:
0010101001000100001

になる。

今度は、7のビット紋の前に0がふたつ増えた形になる。

並べると、こうだ。

7:
10101001000100001

14:
010101001000100001

28:
0010101001000100001

きれいだ。

7、14、28は別々の数なのに、途中から同じ道に入る。
だから、ビット紋も後半が同じになる。

数の足あとが合流すると、模様も合流する。

これは面白い。

合流すると、語尾が同じになる

前回、コラッツ予想を「数の川」として眺めた。

違う場所から出発した数たちが、途中で同じ道に入る。
支流が本流に合流するように、数のルートも合流する。

今回、偶数と奇数を0と1に置き換えてみると、その合流が模様として見えてくる。

同じルートに合流した数は、ビット紋の後ろ側が同じになる。

つまり、語尾が同じになる。

7に合流する14。
14に合流する28。
28に合流する56。

このあたりは、みんな「7族」と呼んでもよさそうだ。

56 → 28 → 14 → 7 → …

なので、56のビット紋は、7の前に0が3つ増える。

こういう数たちは、違う入口から入っているだけで、後半は同じ帰宅ルートを歩いている。

数には、親戚がいる。

もちろん本当に親戚ではない。
でも、模様を並べると、そう見えてくる。

7族。
5族。
13族。
27族。

言い始めると、もう図鑑である。

コラッツ語では「11」が出ない

ここで、少しだけルールを眺めてみる。

コラッツ予想では、奇数に出会うと、3倍して1を足す。

奇数 × 3 は奇数。
そこに1を足すので、必ず偶数になる。

つまり、

奇数の次は、必ず偶数。

ビット紋で言えば、

1の次には、必ず0が来る。

だから、コラッツのビット紋には「11」が出てこない。

これがかなり面白い。

0と1でできているけれど、完全に自由な二進数ではない。
普通のランダムな模様ではない。
そこには、コラッツ予想のルールが染み込んでいる。

いわば、コラッツ語である。

コラッツ語では、1のあとに1は来ない。
奇数は必ず偶数を連れてくる。

一方で、0はいくらでも続く。

偶数は2で割られる。
また偶数なら、さらに2で割られる。
また偶数なら、また2で割られる。

0、0、0、0……

長い下り坂である。

ビット紋を見ていると、数の旅が少しだけ地形に見えてくる。

1は打ち上げ。
0は坂道。
10000は、打ち上がったあとに長く滑り降りる道。
101010は、跳ねて、落ちて、また跳ねて、また落ちる道。

ただの0と1なのに、妙に足ざわりがある。

コラッツ電気泳動



ここまで来ると、もう少し見たくなる。

ビット紋を横に並べたら、どうなるだろう。

7:
10101001000100001

14:
010101001000100001

28:
0010101001000100001

これを、0は白、1は黒として並べる。

すると、数ごとの足あとが縞模様になる。

数字をひとつずつレーンに流す。
偶数なら白い点。
奇数なら黒い点。
1にたどり着くまで、それを横に並べていく。

まるで、電気泳動のバンドみたいだ。

コラッツ電気泳動。

名前がついた。
つけてしまった。

数字をゲルに流し込む。
すると、1へ帰るまでの足あとが、黒と白の縞模様として浮かび上がる。

すぐ帰る数は、短いバンドになる。
遠回りする数は、長いバンドになる。
同じルートに合流する数は、途中から似た模様になる。
27のような数は、ゲルの端まで行きそうな顔をしている。

これはもう、数学の証明ではない。

でも、観察としてはかなり楽しい。

小さな実験:自分の数のビット紋を作ってみる

ここで、少しだけ手を動かしてみる。

好きな正の整数をひとつ選ぶ。
最初は、7、9、11、13、14、28あたりが楽しい。

ルールは同じ。

偶数なら、2で割る。
奇数なら、3倍して1を足す。
1にたどり着くまで続ける。

そして、ルートを書いたら、偶数を0、奇数を1に置き換える。

それが、その数のビット紋になる。

たとえば、7なら、

7 → 22 → 11 → 34 → 17 → 52 → 26 → 13 → 40 → 20 → 10 → 5 → 16 → 8 → 4 → 2 → 1

ビット紋は、

10101001000100001

になる。

次に、次のことを観察してみる。

0が一番長く続く場所はどこか。
1010のように、跳ねて落ちる形はあるか。
別の数と同じ語尾を持っているか。
2倍した数は、前に0が増えるだけになっているか。

こういう観察を始めると、数字がただの数字ではなくなる。

その数は、どんな縞模様を持っているのか。
どの数と似ているのか。
どこで誰かと合流するのか。

これは、数の指紋採集みたいなものだ。

ただし、繰り返すが、これは証明ではない。

ビット紋をいくら眺めても、それだけでコラッツ予想が解けるわけではない。

でも、証明ではないから意味がない、というわけでもない。

見えなかったものが、見える形になる。
比べられるようになる。
分類できるようになる。
名前をつけたくなる。

そして、名前をつけると、沼に階段ができる。

降りやすくなる。

危険である。

模様にすると、問いが少し近くなる

未解決問題という言葉は遠い。

でも、数のルートを足あととしてたどると、少し近くなる。

さらに、偶数と奇数を0と1に置き換えると、その足あとは縞模様になる。

縞模様になると、眺められる。
眺められると、比べられる。
比べられると、分類したくなる。
分類し始めると、気づけば夜が溶けている。

やはり危険だ。

けれど、Fluffy Laboratoryでは、こういう危ない綿毛を拾っていきたい。

証明するのではなく、遊べる形にする。
解決するのではなく、触れる形にする。
遠くの黒板にある問いを、机の上で転がせるくらいの大きさにする。

コラッツ予想は、数が1へ帰るかどうかを問う問題だ。

でも、途中で生まれる足あとも面白い。
その足あとを0と1にすると、数はしましまになる。

未解決問題は、ときどき縞模様をしている。

次は、このしましまをさらに別の形にしてみたい。

もし、0と1を「右」「左」の指示にしたらどうなるだろう。
偶数なら右へ曲がる。
奇数なら左へ曲がる。
1歩ずつ進む。

今度は数が、紙の上を歩き始めるかもしれない。

しましまの次は、ぐるぐるである。

数は1へ帰ってくるように見える。
では、その帰り道は、どんな線を描くのだろう。

また少し、沼の奥で何かが光った。

おまけ:しましまコラッツ観察シート



ここから先は、実際に数をゲルに流してみたい人向けのおまけです。

本物の電気泳動ではありません。
でも、気分は白衣です。

ビット紋の作り方

  1. 好きな正の整数をひとつ選ぶ

  2. コラッツ予想のルールで、1までのルートを書く

  3. 偶数を0、奇数を1に置き換える

  4. できた0と1の列を「ビット紋」として眺める

観察シート

出発点
例:7

コラッツルート
例:7 → 22 → 11 → 34 → 17 → 52 → 26 → 13 → 40 → 20 → 10 → 5 → 16 → 8 → 4 → 2 → 1

ビット紋
例:10101001000100001

0坂
0が一番長く続いている場所。

跳ね型
1010のように、奇数と偶数が交互に現れる場所。

語尾紋
ほかの数と共通しそうな後半の模様。

合流族
どの数のルートに合流しているか。

ひとこと模様診断
このビット紋はどんな模様に見えるか。

記入例:7

出発点
7

コラッツルート
7 → 22 → 11 → 34 → 17 → 52 → 26 → 13 → 40 → 20 → 10 → 5 → 16 → 8 → 4 → 2 → 1

ビット紋
10101001000100001

0坂
最後のほうに、16 → 8 → 4 → 2 と0が続く。

跳ね型
最初の 101010 が、跳ねて落ちてを繰り返す感じ。

語尾紋
5 → 16 → 8 → 4 → 2 → 1 の部分は、かなり多くの数と共有していそう。

合流族
14、28、56などは7に合流する。

ひとこと模様診断
前半はぴょこぴょこ跳ねて、後半で一気に坂を下る模様。

7族を並べてみる

7:
10101001000100001

14:
010101001000100001

28:
0010101001000100001

56:
00010101001000100001

112:
000010101001000100001

こうして並べると、7の前に0が増えていくだけだとわかる。

これは、2倍した数たちが、最初に半分、半分、半分……と戻ってから7のルートに入るからである。

つまり、2倍族は、ビット紋の前に0を増やしていく一族とも言える。

遊び方その1:0坂を探す

いろいろな数のビット紋を作って、0が長く続く場所を探してみる。

0が長く続くということは、偶数として何度も2で割られているということ。

これは、長い下り坂のようなものだ。

遊び方その2:跳ね型を探す

101010のように、1と0が交互に続く部分を探してみる。

これは、奇数で跳ねて、偶数で落ちて、また奇数で跳ねる形。

落ち着きがない。
でも見ていて楽しい。

遊び方その3:語尾紋を探す

別々の数から始めたのに、途中から同じルートに入ることがある。

同じルートに入った数は、ビット紋の後半が同じになる。

これを語尾紋として集めてみる。

同じ語尾を持つ数を並べると、数の親戚図鑑みたいになる。

AIに観測助手を頼むプロンプト

次のルールで、コラッツ予想のビット紋を作ってください。

偶数なら2で割る。
奇数なら3倍して1を足す。
1にたどり着いたら止める。

出発点は「○○」です。

次の項目を表にしてください。

  • コラッツルート

  • ビット紋

  • 0が一番長く続く場所

  • 1010のような跳ね型がある場所

  • どの小さい数に合流するか

  • 同じ語尾紋を持ちそうな数

  • このビット紋の見た目を、少しユーモラスに表現

これは証明ではなく、観察遊びとして扱ってください。

次回予告

次回は、0と1をただの模様として見るだけではなく、動きの指示に変えてみます。

偶数なら右へ曲がる。
奇数なら左へ曲がる。
1歩ずつ進む。

数の足あとが、今度は線になる。

コラッツ散歩図。

しましまの次は、ぐるぐるです。

第1話:未解決問題を「解く」前に、「遊べる形」にしてみる
第3話:コラッツ散歩図
マガジン:


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