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★★★★★三つの「ただ」と体験なき言葉の空虚——水源とおはぎの比喩から問う真宗の聴聞

浄土真宗の法座に身を置くと、
「自力は間に合わない」
「阿弥陀仏におまかせする」
「ただで救われる」 といった言葉をよく耳にします。
しかし、私はその言葉を聞くたびに、拭いがたい違和感と深い悲しさを覚えて仕方がありません。
ただ話を聞いただけで本当に満足できるのだろうか、
なぜその話が自分自身の切迫した生死の問題にならないのだろうか
という疑問です。
その違和感の根底には、「ただ」という言葉に潜むまったく異なる三つの段階と、それを語る者の体験の有無という重大な問題があります。

第一の段階は、言葉の表面だけを受け取った「知識のただ」です。
「いま死んだら自分はどうなるのか」
という生死の切迫感を持たないまま法座に座り、
「自力ではなく他力なのだ」
「ただで救われるのだ」
と概念として聞き流す状態を指します。

これは、水源に通っていない水道の蛇口をいくらひねっているようなものです。
どれほど蛇口の構造や仕組みを詳しく説明されても、水源から水が通っていなければ実際に水を得ることはできません。
それと同じように、自分の問題になっていない人にとっては、どれほど他力の話を聞いても頭の中の知識のコレクションに過ぎず、救いの水は一滴も湧き出てこないのです。
また、この状態はおはぎの例えでも説明できます。目の前に五つ並んだおはぎのうち、一つ目を食べ、次にいきなり五つ目を食べたからといって、「五つ食べた」とは言えません。 途中の二つ目、三つ目、四つ目を食べていないからです。
それと同じように、「自力では無理だ」という一口目を聞き、最後に「他力だからただである」という五口目だけを聞いたところで、途中の求める過程を通り抜けていない以上、教えを本当に味わったことにはならないのです。

第二の段階は、葛藤のただ中で生じる「求めたただ」です。
自身の切迫した生死の問題に直面し、
「自分はどうすればこの問題を解決できるのか」と必死に問い、疑情を晴らそうと、聴聞を重ねて求め抜く過程を意味します。
自力で何とかしようと足掻き、蛇口をひねり水を出そうとし、おはぎの二つ目、三つ目、四つ目を必死に食べようと試みる過程を経て、自分の力では到底間に合わないという絶望的な現実が、自分自身の痛切な問題として明らかになります。
ここでは「ただ」という言葉は、単なる知識ではなく、自力の限界にぶつかりながら喉が干からびるほど渇望する切実な問いそのものとなります。

最後の第三の段階が、自力が完全に打ち砕かれた先で知らされる「他力に救われたただ」です。
本当の水源は、自力で何とかしようと求め抜いた絶望の果てに、自分が水を出そうとしていたものとは別の、すでに真理によって通っていたものだと知らされる瞬間です。 一つ目も五つ目も、その間のおはぎも、自分自身が食べなくても、すでに真理によって満腹になる世界が用意されていたのだと気づかされるのです。
ここで発せられる「ただ」は、最初から何もしなくてよかったという無頓着な意味ではありません。 求めた過程があり、自力が届かずに打ち砕かれ、他力によって救われたという生の根底を揺るがす体験があって初めて到達する、心底「ほんとうに、ただだった」という歓喜と驚きの表明なのです。

しかし、現在の法座で最も残念で悲しいのは、この求める過程も体験もなく、単なる「知識のただ」が安全な講釈として繰り返されていることです。そしてその最大の原因は、語り手自身が求道の過程を通り、自力無効と知らされ、他力信心に救われたという本物の体験を持っていないことにあります。
語り手自身が生死の崖っぷちに立たされ、迷いの世を憂い、自力の限界を舐め尽くした底尽きの体験と共に、他力に救われていなければ、その口から出る言葉はどこまでいっても概念の解説や伝統の引き写しを出ません。
自分が飲んだことのない水を人に勧め、一つも食べていないおはぎの味を語っているようなものです。
話し手が自ら求道の途を歩み、他力信心に救われていること——これが何よりも肝要であり、その体験を経て絞り出された言葉だけが、聞き手の中に眠る生死の問いを呼び覚ます触媒となります。

聞く側が求める過程を自ら通ることもなく、語る側にも生死を超える体験がないまま、最後の「ただ」という言葉だけを聞いて満足している場に付き合うのは、残念で悲しく、時間の無駄でしかありません。
水源の通っていない蛇口をいくらひねっても水が出ないように、体験なき言葉が交わされる法座からはよほどご縁の深い人以外は、ほとんど何も汲み取ることができないのです。
他力の過程を今後も有縁の方々に私はお話していく所存です。

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