「映画『PiCNiC』に見るあの時の風景」絵手紙と日記 54枚目


それは忘れられない、また見たい、けれど二度と見ることの叶わぬ景色です。
20代後半、私は東京の日の出桟橋の近くに勤めていました。
最寄り駅はゆりかもめの「日の出」駅ですが、JR浜松町駅から15分ほど歩いて通っていました。
その頃の私は人生で一番歩いていた時期で、フルタイム勤務をしつつ、1日2万歩を目標にしていました。
会社からの帰りは最も歩数を稼げる時間。
日の出から東京駅方面、五反田方面、六本木方面 etc.様々なルートを開発して日々歩いていました。
品川駅までもよく歩いていましたが、この時にもっぱら使っていたのは山手線に沿うように走る第一京浜です。
この辺りでは第一京浜は山手線の陸側を走っています。
海側にも道は何本もあります。
が、この海側は当時苦手なルートでした。
会社帰りなので季節にもよりますが、歩くのは日暮れから夜の時間帯です。
海側の芝浦辺りは運河が入り組んでいて、その雰囲気が苦手だったのです。
時は2000年代半ば、ちょうど再開発が行われている最中でした。
夕暮れともなると人気は少なく寂しい雰囲気。
工事中の巨大なクレーンがあちらこちらに浮かび上がります。
入り組む運河も方向を失わせる一因となり、「どこを歩いているのか」「あとどれくらいで目的地に着くのか」が分からなくなります。
(ちなみに当時はガラケーです)
とくに印象的だったのは品川駅の手前。
まだ高層ビルはさほど多くなく、あちこちに建築中のビルの影が見えます。
そんな中、異彩を放っていたのがNTTドコモ品川ビルです。
通称ガンダムビルと呼ばれる厳つい29階建てのビルが、品川駅の手前で、わずかにオレンジ色の残る空を背景に浮かび上がっていたことがとても印象的です。
あのビルに近づけば品川駅はすぐそこ。
でも近寄りがたい圧があってなんだか怖い。
いくつもの橋を越えて、心身ともに疲労を感じている私には、ボスキャラのような存在でした。
そういったわけで会社帰り、海側の道はあまり歩かなかったのです。
一昨年くらいから何度か、その辺りを歩いてみました。
今は再開発が進み、高層ビルやタワーマンションが林立し、あの頃の不気味さはありません。
そうするとなぜか無性にかつての光景が懐かしくなって。
不気味だったから近寄らなかったのに、今はあの不気味さを再体験したい。
そう思ってしまうのです。
人って不思議で勝手なものですよね。
ところで、実は叔父が亡くなり昨日葬儀でした。
そのためnoteの毎日更新はストップしました。
これからはまたマイペースに更新していこうと思います。
葬儀は京都でしたが、今日はわたくし東京にいます。
朝5時に実家を出発して東京の家に帰ってきました。
午前中に用事をすませ、午後、つい先ほどですが映画を観てきました。

岩井俊二監督の「PiCNiC」
1996年公開の映画です。
私この映画が大好きで何度も観ています。
とはいえ、最後に観たのがいつなのか思い出せないほど昔のことです。

名画座の目黒シネマで今日まで公開されていました。
最後の上映を駆け込みで鑑賞。
最初から胸がいっぱいでした。
今回、ストーリーには触れませんが・・・
風景がとても懐かしい。
何度も観ているのだから当たり前ですが、それだけではないのです。
この映画、撮影は1994年。
とくに海沿いの雰囲気は現在よりも、私が日々歩いた2000年代半ばに近いのです。
この映画を何度も観たのは公開当初から2000年代前半のこと。
その頃には持っていなかった当時の風景への「郷愁」のような思いが、今日は胸に何度も飛来してきました。
時代も変わった。
風景も変わった。
そして私も変わった。
けれど映像の中に「あの時」がある。
でも「あの時」の風景も、自分の時間経過に合わせて見え方が移り変わるのですね。
私が「今」見ている風景を、未来の私はどういう風に見るのでしょうか。
そんなことも考えた映画鑑賞でした。
🌟🌟🌟
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